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『ダンガンロンパ THE STAGE 〜希望の学園と絶望の高校生〜 2016』脚本・演出、田尾下 哲さんインタビュー

人間だからこそ出来る学級裁判のやり方で、言葉の力を見える形にします。

Q ”おしおき”のシーンもそうですが、学級裁判もひとつのハイライトシーンですね。原作ゲームのキャラクターの設定も非常に面白い、そこのところは演出家としてどう捉えていますか?

田尾下:超高校級の能力の学生が集う私立希望ヶ峰学園が舞台ですが、最初に苗木 誠という人物が、超高校級の幸運として紹介されます。彼は幸運以外は普通の高校生なんです。もう一人、霧切響子は”超高校級の???”、つまり特殊能力は伏せられて紹介されますが、彼女には何らかの特別な能力があることはほのめかされています。ですから、15人の高校生の中で、唯一、苗木 誠だけが普通の高校生である、という事はこの物語でしっかりと描かないとならないと思っています。もしも他の人達も平凡な高校生として描いてしまったら、苗木 誠の成長物語が際立たないと思うんです。裁判台は丸いので舞台では凄く描きにくい。十数人(台に丸くなって)乗る訳ですが、普通、これだけの人数が台に乗ったら、被りもあるし、なかなか見えにくくなる。カメラで抜いてフォローして頂くにしても、やっぱり、多いんですよ。でも、この学級裁判をしっかりあの原作のイメージで再現したい……。予算が許せば裁判台に傾斜をつけて人を乗せたままベルトコンベアーで回し、話の核になる人が一番見えやすい位置に動かしていけばいいのかもしれません。そんなことを考えている時に、いつも自分と組んでいるブロードウェイの舞台装置家が、自分たちの足で回って動いてやった方が絶対にいいよ、と言ってくれたんです。

Q その方が面白そうですね。

田尾下:はい。実際に自分たちで歩いて、動いてみて、3次元だからこそ、人間だからこそ出来る学級裁判のやり方を考えました。例えば、その時に発言権がある人が注目される位置にいる、すると、この人の意見によってみんなが意見を変える訳ですよ。1対十数人になるとか、そういうところを描ければいいなと思って。その議論が、『ダンガンロンパ』の題名の所以ですし、そこのところをしっかり見える形で「この人の発言がこれだけの影響力を与えている」と「この人の発言によってこの人が疑われる」っていうことをしっかり見せられるようにしたいな、と思ってやっています。裁判のシーン、今僕はそこに全精力を注いでいますが、裁判の回数を増やされたら、”もうバリエーションがないよ”っていうくらいにつぎ込みました(笑)。先日もフォーメーションを変えました。まだまだ、創っています。

Q 要するにマンパワーですね、人間の力で見せていくんですね。

田尾下:そうです!身体全体、そして人物の配置で言葉の力を見える形にします。

Q 『ダンガンロンパ』は、”弾丸(ダンガン)論破(ロンパ)”、ですからね。

田尾下:そうですね~。論破する瞬間っていうのは、みんなが予期しないところで、いきなり、苗木のあの有名な台詞、「それはちがうよ!」がある。それを言う前は、”ちがわない”ところで議論が進んでいなければいけない、そこに流れかけていく瞬間に「それはちがうよ!」「え!?」っていう、この切りかわしを見た目でもわかるようにしたいなっていうのはあります。一番効果的な場所、並びで。アニメはカット割が出来ますが、3次元でやる場合はそれが出来ないし、そうなると、最初にどういう順番で並ぶか、全部解体して、並び直し、その時の話者が一番見えやすいところにいて、次にこの人、この流れでイケるのかどうかをシミュレーションして稽古をして…本当に、パズルです(笑)。

Q ここは楽しみですね~たぶんギリギリまで調整することになりそうですね。

田尾下:もちろん(笑)、でも、見せ方はもう決めています。

Q この作品はキャラクターも際立っていますし、しかも人数が多いですね。

田尾下:そうですね、物語として、十神白夜と霧切響子は、苗木 誠と江ノ島盾子以外に、特に際立って、リーダーシップを取っていき、かつ議論を動かしていき、空気を変えていく、物語を動かす、凄く大事なキャラクターだと思います。苗木 誠と江ノ島盾子と同じように重きを置きます。くせのある十神と霧切、特に霧切っていうのは”超高校級の???”の部分が、どう判明していくのか、それが彼女の行動とどう関わるのか…苗木誠の成長とともに彼女の自己発見も物語の主軸に置きたいな、と。十神はこの状況を受け入れるかのように”このゲームを、”コロシアイゲームを楽しむ”って言っている彼が、どのように人間味を出していくか、そこのところを人間ドラマとしてしっかり描きたいなと。皆さん、熱いんですよ!15キャラクター、それぞれが、意味があって居る、一人一人、何かの理由があって位置づけがあってここに来ている。その意義を皆さんちゃんと自覚して、取り組んでくれています。まだ完成段階ではないですが、そこらへんが凄く頼もしい!大和田紋士役の村田充さんは不良役ですが、色々と工夫をしながらクールな中に男気や優しさを同居させ、石丸清多夏役の杉江大志さんも熱血風紀委員を声を限りに演じてくれています。他にも、本当に一人一人の出演者に思い入れがあります。彼らは年齢的にはもちろんリアル高校生ではないですが、超高校級にふさわしい人たちをプロデューサーさんに集めて頂いて、我々は、お膳立てをして頂いている中でやってるんだなって感じますね。

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2.5news(編集部)

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