話題作『ダンガンロンパ THE STAGE~希望の学園と絶望の高校生~ 2016』、いよいよ開幕となる。稽古まっただ中、演出のこだわり部分や、見どころ、またアニメ・マンガ・ゲーム原作の舞台化の可能性等について今回の脚本・演出を手掛ける田尾下 哲さんに話を伺ってきた。
Q:制作発表の時におっしゃっていましたが、この『ダンガンロンパ THE STAGE』の初演を観たそうですね、その時の感想を。
田尾下:僕のいろんな友達が2.5次元舞台をやっているので、様々な作品を観ていますが、この『ダンガンロンパ 』は裁判台で議論を進めていき、その犯人探しが物語になっています。裁判によって人を追い込み、最後に作品のテーマ、希望につながっていく、しっかりとしたドラマがある。物語と世界観に魅力を感じました。拝見して、ゲーム原作の世界観が、生身の人間が演じて舞台で表現されたことによってさらに魅力的なものになり、観客は物語の強さに惹き付けられるんだな、と実感しました。
Q 『ダンガンロンパ THE STAGE~希望の学園と絶望の高校生~2016』の演出をやると決まった時の感想は?
田尾下:まず、お客様に、原作の持つメッセージを感じて頂けるようにしっかりと物語を物語りたいと思いました。現実的にはどういう空間を美術として見せるのか、客席を使うのか、使わないのか、そこから考えました。
Q 現実的には、劇場の仕様によっては物理的に出来ること、出来ないことがありますね。
田尾下:そうです。演出の師匠はドイツ人なんですけど、「演出家として最初にやることは、予算を聞くことだ」と。「劇場のプロダクションの予算がどのくらいで、どのくらいの規模感で出来るのか、それで自分の描きたいその物語の世界観が決まるんだ」っておっしゃっていました。実は原作を知らないで舞台を拝見して、”こういう世界観なんだ”と思ったんですけど、その後、アニメを観てゲームもやってみまして、もしかしたら、”舞台でもこういうところを取り上げていってもいいんじゃないかな?”と思うようになりました。そこでプロデューサーと相談した時にまず伝えたのは”おしおき”!これを入れないのは『ダンガンロンパ』としてはもったいない、と思いました。演出を担当すると発表されてから、本当にいろんな人からの反応があり、思いもしない人からも「お前が演出やるってことは”おしおき”やるんだよな?」と言われました。
つまり、僕は映像ではなく舞台演出家としてやってきたので、当然、身体表現でやるんでしょっていうことを言われて、「そうだよな~(笑)」と。それは今でも、プレッシャーではあります。あのゲームの世界観をどう3次元化するか。例えば、俳優をグリーンバックで撮って、映像として流すのは簡単ですよね。また、映像と俳優を合わせることも、もちろん考えてみたのですが、やっぱりライブの身体にこだわってやることに決めました。宙吊りとかの大仕掛けをするのではなく、どうやってあの”おしおき”を描くかが一番のプレッシャーです。初演の台本がとても良かったこともまた、“おしおき”をやることを決意させてくれました。アニメは13話、ゲームは30~40時間、僕は50時間かかったんですけど(笑)、この原作を3時間弱の物語に台本化するという非常に難しい作業を初演の時点で素晴らしいものになさっているので、ホンに関しては、あまり心配はなく、人物の背景や動機を深めて、原作の印象的なセリフを出来るだけ加え、自分を演出として使って頂く意味を考えた時に、”おしおき”がポイントになるかなと思いました。
Q ”おしおき”のシーンはひとつの山場ですよね。特にゲームをやってるファンは「ここはどういう風になるんだろう」、舞台上でどう表現されるんだろうって非常に、興味津々なんじゃないかと。
田尾下:製作発表ではお話ししなかったんですけど、公式Twitterで、「”おしおき”やります」って公表したとたんに、皆さんに書き込みして頂き、また、個人的に連絡して下さる方もいらして……。また、「映像でやらないんですか」っていう反応もありました。期待されている分、裏切ったら、本当に皆さん、がっかりされるだろうなって、そういうプレッシャーに常にさいなまれている訳です(笑)。原作ファンの方だけではなく、初めて観る人にも世界観がわかるように、振付のZoo-Zooさんと稽古が始まる前からワークショップという名の先行稽古をして取り組んできました。今は、稽古の途中段階ですが、Zoo-Zooさんのおしおき開始の儀式としての踊りも含めて、身体だからこそ描けるダンガンロンパのおしおき、が見えてきました。皆さんが100%納得出来るものは、なかなか現実的には難しいと思いますが、多くの方に「なるほどね、これが3次元版の”おしおき”なんだ」と思って頂けるようにしたいな、と。