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【レポート】MUSICAL『魔界王子 devils and realist』

MUSICAL『魔界王子 devils and realist』

『コミックZERO-SUM』(一迅社)で連載中の人気コミック『魔界王子 devils and realist』が舞台化する。原作は高殿 円、漫画は雪広うたこ、アニメ化は2013年7月~9月まで放送されており、満を持してのミュージカル化となる。

時は19世紀末のイギリス、貴族の子息であるウイリアムは後見人である叔父が事業に失敗したために財産を失ってしまう。”学費未納で退学”だけはなんとしても避けたいウイリアムは屋敷に戻って金目のものを探す。地下室に入ると魔法陣があり、彼は意図せずに悪魔・ダンダリオンを召喚してしまった。彼はウイリアムに「お前はソロモン王の血を引く選定公であり、魔界の代理王を選ぶ権利がある」と言う。さらにダンタリオンは”代理王候補”を名乗り、また、同じく候補のシトリー、カミオも現れて、ウイリアムと悪魔達のなんとも騒がしい日々が始まる、というのが大まかなストーリーである。

まずは、バフォメット役のKENの独唱から始まる。客席から入り、圧倒的な歌声で物語の導入を担う。♪どうぞ、我らの世界へ♪、この歌声だけで、もう『魔界王子』の世界観に入ることが出来るし、設定等の説明もされているのでわかりやすい導入となっている。それからアンサンブル陣のダンス、主要キャラクターが登場する。ここは楽曲が滑らかに、流れるように次から次へとよどみなく、これぞミュージカル、という幕開きである。多彩な曲、エンターテイメント性高く、期待感の持てる幕開きだ。

 

  

  

プロローグが終わり、一転して学校のシーン、ウイリアムは学校でも一目置かれている存在、科学だけを信じる超がつくリアリストでかなりの自信家、友人のアイザックはオカルト大好き少年、超現象を信じる、ウイリアムとは真逆だ。ある日、自分が学費未納と知り、学費を工面すべく、屋敷に戻るが、見事に何もなく、家令のケヴィンは何と畑仕事(笑)、もう自給自足な生活、地下室に何かあるかもしれないと思い、無理矢理扉を開けたら、さあ、大変!な状況に陥ってしまうが、ここまでをテンポよく、ユーモラスにストーリーを運ぶ。映像は一切使わず、アンサンブルの動きで超現象を見せる。ダンサー達が手に布を持って、それを様々に変化させる演劇的な手法、これが効果的で、魔界の世界を妖しく魅せる。ウイリアムは、自分から扉を開けてしまったとはいえ、破産といい、魔界といい、”災難巻き込まれ型”の主人公。降り掛かってくる災難に対して、しかも自分が絶対に信じない非科学的な”事実”に向き合いつつも、右往左往する主人公を石渡真修が、時としてちょっとユーモラスに、真っすぐに演じる。最初に出会う魔界の人物・ダンタリオンは、そんなウイリアムに、”絶対に守る”と言い放つ。その関係性、ぶつかり合いながらも、少しづつ変化していく。ある意味、デコボコな2人であるが、意外と相性がいいかもしれないという空気感を醸し出す。ギャグをいたるところに散りばめて、笑い所も多く、肩肘張らずに見られる。バフォメットの”執事と羊と山羊”ネタのミュージカルナンバーはかなり笑える歌詞で、ここは聞き所。アイザックの”オカルトおたく”ぶりは微笑ましくも可愛らしい感じでちょこちょこ登場し、楽しいキャラクター作りで好感が持てる。その他の”魔界関係者”も期待を裏切らないキャラクター構築、キャラクター全てに見せ場やミュージカルナンバーがあり、変化に富んでいる。「校内に悪しき気配が満ちている」というクロスビー牧師のアクションシーンは見せ場、ここはしっかりと観て欲しいポイントだ。

ストーリーは単行本でも序盤の部分、この先のストーリーを知ってるファンもいることであろう。ミュージカルで描く、アナログで表現する『魔界王子』、イリュージョンを一切使わない姿勢、演劇にこだわった表現、続きも観てみたいと思わせてくれる作品だ。

 

 

なお、ゲネプロ前に囲み会見があった。
今回が初のアニメ・マンガ原作作品への出演となる執事のバフォメットを演じるKENは「まさか、ヤギになると思ってなかったです(笑)」とコメント、レベルの高い歌唱で見せ場を作って好演。エリート学生のカミオを演じる米原幸佑は、「新しいコンテンツを作り上げる様を間近で観ながら、スパイスになれるように」と語った。また、ウイリアムの家令ケヴィン役の法月康平は「2.5次元舞台作品がたくさんありますが、その中で”ザ・ミュージカル”と呼んでいい舞台」と語ったが、ミュージカルナンバーも非常に多く、オペレッタ風な場面もあって賑やかで華やかな印象のシーンも。魔界の侯爵バアルベリト役・遠藤誠は「クロス(布)を使った演出は、他のカンパニーでは観られないものになってると思います」とコメントしたが、ブルーの透けたクロスがはためく瞬間、ランダムな光沢を放ち、視覚的に有効な使い方であった。『魔界王子』なので、”悪魔がいっぱい”状態、十字架を握りしめるクロスビー牧師役の松本祐一は「別の方向からストーリーを支えていければいいなと」と語る。悪魔と正面切って戦うのは”牧師さんのお約束”、期待通りの働きぶりであった。ジル・ド・レイ役の碕理人は、「原作にはあまり描かれていないんですが、カミオとの絡みを見てほしい」と。可愛らしいオネエぶり、インパクト大、であった。オカルト大好き少年アイザックを演じる小西成弥は「悪魔が出てきますので、わくわくします。すごくわくわく、非常にわくわく!」と連呼、石渡真修から「カタカナばっかりになっちゃうじゃん!」とツッコミを入れるも、小西が「違うよ、ひらがなで“わくわく”だよ(笑)」と妙な反論、他の共演者もこれには爆笑。悪魔の代理王候補ダンタリオン役の鮎川は「セットも照明も衣装も原作に忠実に、僕らも役に一生懸命取り組んできました。最後にお客様が入って完成です。一緒に作り上げてくださいとお伝えしたい」語った。ウイリアム役・石渡は”座長”らしく「本当に楽しめる作品になっていますので、全員で千秋楽まで上を目指してがんばりたいと思っています!応援よろしくお願いいたします!」としっかりとPR、会見は終了した。

[出演]
ウイリアム :石渡真修、ダンタリオン:鮎川太陽、 ケヴィン :法月康平、アイザック :小西成弥、クロスビー :松本祐一、シトリー :河原田巧也、ジル・ド・レイ:碕 理人、カミオ:米原幸佑、 バアルベリト:遠藤 誠、バフォメット:KEN ほか

[公演データ]
ミュージカル『魔界王子 devils and realist』
原作:高殿 円 漫画:雪広うたこ 『月刊コミックZERO-SUM』(一迅社連載中)
演出:元吉庸泰(エムキチビート)
製作:ストラドフォード校歌劇部

2016年6月1日~6月5日
全労済ホール/スペース・ゼロ

公演DVD及びCD発売決定!
DVD価格:7000円(税抜)
CD価格:3000円(税抜)

ニコ生配信決定!
配信日時:2016年6月2日14時/19時公演
視聴ポイント:各1600ニコニコポイント
チケット販売期間:2016年6月30日23時59分まで。

※公演の感想を「みんなのレビュー評」コーナーにお寄せ下さった方から抽選で5名様に
石渡真修さんのサイン入りシークレット写真をプレゼント!
(当選者は写真の発送を持ってかえさせて頂きます)

http://www.clie.asia/makaiouji/

(C)2015高殿円、雪広うたこ・一迅社/ストラドフォード校歌劇部

取材・文/高浩美
撮影/洲脇理恵(MAXPHOTO)

■ミュージカル『魔界王子 devils and realist』 過去リリース情報
https://stagenews25.jp/?p=1750
https://stagenews25.jp/?p=2907
https://stagenews25.jp/?p=2894

2.5news(編集部)

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