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【レポート】舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺

舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺

今、話題沸騰中のゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』は、DMMゲームズが制作、ニトロプラスがキャラクター及びシナリオを担当したシミュレーションゲームであるが、名立たる刀剣が刀剣男士(とうけんだんし)と呼ばれる個性豊かな男性キャラクターとして登場し、歴史上の戦場を駆けめぐりながら部隊を編成・育成していくというコンテンツ。 女性層を中心に大きな支持を受け、全国に刀剣ブームが起こり、日本各地の歴史博物館、美術館や刀鍛冶伝承施設などに多くの若い女性が訪れるという、これまでとは全く違うムーブメントにまで発展。昨年はミュージカル版がトライアル公演を行い、話題騒然、今年はストレートプレイ版とミュージカル版(本公演)とファンにとってはたまらない公演。今回は満を持してのストレートプレイ版がお目見えする。 脚本・演出は、演劇ユニット「ピースピット」主宰、舞台『K』 、舞台『TRUMP』 などを手がけている末満健一、そのじっくりとした舞台創りには定評がある。

西暦2205年。歴史改変を目論む「歴史修正主義者(れきししゅうせいしゅぎしゃ)」が過去への攻撃を開始した。対峙する時の政府は歴史の守りとして「審神者(さにわ)」なる者を過去へと派遣する。物の心を励起(れいき)する審神者の力によって生み出された、刀剣に宿りし付喪神「刀剣男士(とうけんだんし)」たちは、審神者と共に歴史を守る戦いへと身を投じる。ある日、彼らの本丸に新しい刀剣男士が顕現する。それは不動行光──戦国武将・織田信長が佩用し、彼に仕えた近習・森蘭丸へと授けられることとなる一振り。不動行光は信長の愛刀であったことの誇りを顕わにするが、同じく信長を元主とする宗三左文字、へし切長谷部、薬研藤四郎らとうまく噛み合わない。近侍に任命された山姥切国広は、不動行光の参入により和の乱れた本丸を立て直そうと奔走する。そのさなか、審神者より天正十年──織田信長が果てた歴史的事件「本能寺の変」へ出陣の命が下る、というのが、だいたいのストーリーである。

高低のある舞台でセットは”木調”、オープニング曲が、いかにも”時代劇が始まる”といった雰囲気で劇場全体が『刀剣乱舞』の世界に染まっていく。そして「『刀剣乱舞』始まる、近う寄れ!」で一気に『刀剣乱舞』の空間が出現する。キャラクターが一気に揃うところは華やかだ。

本能寺の変、戦国時代の最もエポックメイキングな出来事で、時代劇や小説ではおなじみだ。本能寺の変といえば脳内に浮かぶのは、光秀の謀反、信長自害、そしてあの名台詞「是非もなし!」等の言葉が浮かぶが、今回は『刀剣乱舞』なので、スポットが当たるのは刀剣男士たち、よく知っている歴史を全く違う角度から観ることになる。審神者より命が下り、天正十年の本能寺に行くことになった刀剣男士たち。心中穏やかでないのは信長を主人とした刀剣男士たちで、その中でも不動行光は心乱れる。信長は酔うと膝を叩いて「不動行光、つくも髪、人には五郎左御座候」と歌ったというエピソードがあるくらいだ。信長の自慢の名刀、不動行光は森蘭丸が拝領、肌身離さず持っていたために、本能寺の変で焼け身になったとされる。さて、この名刀を森蘭丸が信長から譲り受けたいきさつであるが、ある日、信長は小姓たちを集めて不動行光の鍔にあしらわれている菊の数を当てるという遊びを始め、景品が、なんと不動行光であった。しかし、信長の御側付であった森蘭丸は正解を知っていたので、参加しなかったのである。その態度を気に入った信長は、この名刀を彼に譲り渡した。故に不動行光はそれを誇りとしていたのであるが、ことあるごとに「俺はダメ刀だ」と自嘲気味に言うのは愛された分を返せなかったという想い。泣けてくるキャラクターだ。

ファンには嬉しい名台詞、やり取り、”お約束(真剣必殺、内番)”のシーンはもちろんだが、刀剣男士が繰り広げる”ヒューマンドラマ”は必見。全体としては”硬派”であるが、刀剣男士たちの本丸でのやり取りや、三日月宗近と山姥切国広が語らう場面等は和めるので、客席からちょっと笑い声も。こういったメリハリが物語にアクセントをつける。

舞台中央に階段があり、この階段は2つに分かれて変化する。この階段がダイナミックさを生み出す。皆、アクションには長けており、こういったシーンは見どころとなっている。また、楽曲も時代劇なテイストのメロディをロック調にアレンジしているが、後半のアクションシーンではこのロック調の楽曲をさらにアレンジ、ラテン系のテイスト、軽快なリズム感を加えてラストを盛り上げる。殺陣は昨今、よく見かける”映像でゲームっぽさを出す”ことはせずに、あくまでも俳優の身体で勝負、皆、大張り切りで駆け回る。アンサンブル陣も派手に動き回り、ダイナミックなシーンになっていた。もちろん、通路を使う演出もあるので、劇場に足を運んだらここは体感して欲しいポイントだ。映像もここぞという場面で活躍するが、基本はヒューマンパワーの演出になっている。

刀剣男士たちは付喪神ではあるが、生身の人間と同じく、悩み、傷つき、迷い、そして泣きもするし、笑いもする。そしてあるがままの歴史を守るために戦うが、時として、その戦いは主人と対峙するかもしれないということもある、そんな過酷な状況もありうる刀剣男士。彼らの血の通った姿は、観客の心をさらに動かす。舞台とはそういうものだということを改めて感じさせてくれる作品である。

なお、ゲネプロ終了後に会見があった。刀剣男士、揃い踏み!で、賑やかな雰囲気になった。座長であり、三日月宗近役の鈴木拡樹は「ゲームか始まり、アニメの発表もありました。今日から舞台も始まります。顔合わせのときに“戦ってください”という強い言葉をいただきました。“次”を目指すことはもちろんですが、止まらぬよう戦い続けて、この作品を終えたいです!」と挨拶した。これからも、様々な形で広まっていくであろう『刀剣乱舞』、このストレートプレイ版、話題作とあって大勢の報道陣が詰めかけ、多くのフラッシュがたかれたが、このフラッシュの多さは注目度が高い証拠である。この次があるとしたら再演なのか、新作なのか、興味は尽きない。

 

 

[出演]
三日月宗近:鈴木拡樹 山姥切国広:荒牧慶彦/宗三左文字:佐々木喜英 江雪左文字:輝馬
小夜左文字:納谷健/薬研藤四郎:北村諒 へし切長谷部:和田雅成 不動行光:椎名鯛造/
一期一振:廣瀬大介 鯰尾藤四郎:杉江大志 燭台切光忠:東啓介/鶴丸国永:染谷俊之 ほか

[公演データ]
舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺

【東京】2016年5月3日~5月13日
シアター1010
【大阪】 2016年5月17日~5月20日
メルパルク大阪
大千秋楽、ライブビューイング決定!
※千秋楽公演独占アーカイブ配信決定
動画配信サービスDMM.comでアーカイブ配信が決定し、5月27日〜PCやスマートフォンで公演が観られる!
DVD&Blu-Ray発売決定
2016年9月7日
Blu-Ray:9800円+税
DVD:8800円+税

http://www.marv.jp/special/toukenranbu/

©舞台『刀剣乱舞』製作委員会

取材・文/高浩美
撮影/公野研究室 冨田祐太郎

2.5news(編集部)

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