【レポート】「弘兼憲史・四季のドラマ オーディオドラマシアター『黄昏流星群』秋公演」

「弘兼憲史・四季のドラマ オーディオドラマシアター『黄昏流星群』秋公演」

人気コミック『黄昏流星群』が大人テイストで朗読劇として舞台化した。21日は「鎌倉星座」と「星楽のマドンナ」、22日は「星を追いかけて」と「星のレストラン」が上演され、22日の公演に取材に伺った。
「星を追いかけて」、主人公は40を過ぎた女性タクシードライバー、10年近くこの仕事をしており、ある日、ある男を乗せたが、その男、予約をしてくれるまでになり、主人公は彼に恋心を抱くようになる。男の仕事は謎に包まれていたが、気持ちはどんどん傾いていく……。「星のレストラン」は青山のフレンチレストランで働く男が主人公。恋人と一緒にいったコンビニである老人に出会う。彼女は老人を家に誘い、男が作ったフレンチ料理に“ダメだし”をするが、その指摘は完璧であった。老人は一体、何者なのか、名のあるシェフではないのか?少しずつ老人の過去が明らかになっていく……。

声優陣が座る舞台の後方にスクリーン、コミックに描かれているシーンと朗読内容を合わせているのだが、声優陣の声の力、とでも言うのだろうか、演じている声優が、そのキャラクターに見えてくる、いや正確にはキャラクターが乗り移ったとでもいうのだろうか、コミックの絵がどことなく生き生きとしてくるのは新しい発見だ。平面であり、2次元であるのに、ちょっと浮かび上がってくるような感覚が妙なリアリティ、声優陣は見た目を自分が演じるキャラクターに“寄せ込まない”、後ろのコミックの絵と演じている俳優、其々の“要所要所”でシンクロさせていく。生ピアノ演奏と効果音、ピアノの演奏がある場面と声優の演技だけの場面とあり、ピアノは過剰にならずに時には控えめに、時には雄弁に、この強弱のさじ加減が絶妙だ。

ひとつめの物語「星を追いかけて」はちょっとドキドキするストーリー。ヒロインが恋心を寄せた謎多い男、しかし、彼もまた彼女に惹かれていくが、男は自分の素性は明かせない。そのもどかしくもある空気感が、声だけで広がりとリアリティを持たせていく。実は男は刑事で、脱獄した犯人を追っていた。ラスト近く、ヒロインは大変なことに巻き込まれるが、彼女を身体を張って守る男、まるで、リアルなドラマを観ているが如くの緊迫感、結末はハッピーエンド。そのエンディングが心温まる。
ふたつめの物語、実は同じ声優陣が演じるのだが、もうガラッと役柄が変わる。少々の休憩時間をはさむが、演劇のように衣裳が変わることもなく、せいぜいシャツを取り替えるくらいのことしか出来ない。コンビニで出会う老人の素性が明かされるに従って、ちょっとづつ声のトーンが変化していく。心情に合わせての演技が、ぐっと作品を身近に感じさせる。最後の方で老人は長年想い続けていた女性と再会する。ここは、感動的な場面、そして老人はささやかな嘘をつく。その嘘をつく瞬間の雰囲気、ここは静かにぐっと胸に迫る。
会場は渋谷プライムのお洒落なeplus LIVING ROOM CAFE&DINING、こだわりのメニューやワインが楽しめる空間、内容にふさわしい落ち着いた店内、ワインやシャンパン、そしてチーズ等をつまみながらの朗読劇、ここは恋愛ストーリー、艶っぽい物語がよく似合う。

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2.5news(編集部)

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