『週刊少年マガジン』(講談社)において連載中の大人気マンガ『FAIRY TAIL』、現在も連載中、アニメも放送され、こちらも大ヒットしたが、いよいよ初の舞台化、話題騒然である。
個性的で問題児ばかりが集まるギルド「妖精の尻尾(フェアリーテイル)」。火を自在に操る滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)のナツ・ドラグニルはそんなギルドの一員。様々な依頼をこなしていきながら仲間とともに魔導士として成長していく――。今回舞台化されるのは、人気の高いニルヴァーナ編。
桜が満開を迎えた4月某日、”絶賛稽古中!”のナツ役の宮崎秋人さんに作品のこと、舞台化の難しさや醍醐味、役柄、自身のことについて語って頂いた。
ナツとしての考え方とか物事の捉え方だったりが、だんだんわかるようになってきた。
Q: この作品に出演、ナツ役に決まった感想をお聞かせください。
宮崎:まず、「FAIRY TAIL」を舞台化するって聞いた時はどうやってやるんだろう、って全く想像がつかなかったです。そのなかでも一番好きなキャラクター、ナツ役をやらせて頂けるっていうのを聞いた時は、ナツが出来るという喜びと、でも、同時に座長というのが頭に浮かんでしまってこれは覚悟を持ってやらなければいけないなと。座長として作品を引っぱっていけるのかという不安もありました。……(僕は)手放しでは喜べないタイプなんです(笑)
Q 非常にアクションも多い作品ですし、ナツってとにかく元気でテンション高いキャラクターですね。
宮崎:今、お芝居の稽古をやっている最中ではありますが、まだつかみ切れていない部分もあります。テンション高いところはもちろんですが、芝居が全部同じ色になってしまうばかりでは観ている人が面白くない。テンションが高いところでも、ナツの感情の違いを表現出来たらいいなと思っています。ここ、1日、2日のことではありますが、ナツとグレイ、2人の関係性の深みを見せられたり、などが出来るようになってきたかな?ナツとしての考え方とか物事の捉え方だったりが、だんだんわかるようになってきました。
Q 宮崎さんが考える作品の面白さは?アクション、これは当然見どころで、どのキャラクターも素敵で魅力的ですよね。
宮崎:原作のマンガ、キャラクターの構成、構築度が凄く強い、特にこの作品って、その他大勢みたいな役がほとんど出てこないんですね。それもまた魅力かな。あとは、生なのでより台詞や感情、そういったものがダイレクトで伝えられるんじゃないかな。舞台ならではの見せ方が結構あって、映像も使いますし、なかなかこういう作品は無いと思います……本当に演出の児玉明子さんの頭の中すごいなって思います。本当に凄いんですよ!「それを舞台に使うんだ!」とか、どんどんどんどん、アイディアが出てくる方なんです。「映像だけだと思わないでね、魔法は」って言われています。もちろんそれだけじゃなく、役者、キャラクターの個性を生かした演出の仕方、芝居の付け方なんですね。だから“舞台”って言わず、”ライブ・ファンタジー”って銘打っているんだなと、いうのがとても納得がいきますね。
Q 「ライブ・ファンタジー」、「ライブ」ですからね。
宮崎:ミュージカルでもなく、舞台でもなく、本当に”新しいな”って思います。
ナツと関わることによって、皆が、また前向きになって歩き出せるようになる
Q ナツというキャラクターの好きなところ、学ぶところはありますか?
宮崎:やっぱり仲間を大事に思うところ。僕も自分一人では何も出来ないし、舞台の上に立つのも、一緒に舞台上に立つ人たち、裏でバックアップして下さる方々もそうですし、スタッフの皆さん、誰かが欠けても絶対になり立たないので、仲間を大事に思うところは、皆、そうかな?あとは、ナツって他人のことでも自分のことのように考えて凄く突っ込んでいく、他人の痛みがわかる男の子だと思いますが、自分はあそこまで深く突っ込んで、っていう風には……うーん、なかなかなれない(笑)。ホントにそこはナツのことを尊敬しますし、しかも周りの人間もみんな前向きにさせることが出来るのが凄いなって思います。自分一人が前向きじゃなくって、ナツと関わることによって、皆が、また前向きになって歩き出せるようになるっていうのはナツの魅力だと思います。自分はネガティブなんで(笑)。
Q 大丈夫ですよ、結構「自分はネガティブ」っていう人、多いですよ。
宮崎:ナツが羨ましいですね。
Q 自分だけが、“わ〜”と盛り上がるだけじゃなくて、みんなを巻き込んで一丸となっていくのがこのキャラクターの魅力ですね。
宮崎:そうですね。一回戦った相手でもナツに感化されて仲間になったり敵を単なる敵として見ていない、単純に倒す相手ではなくて、ちゃんと人として見ているし、その後、仲良くなったり、ってところが素敵なんじゃないかな。とか。また、いくら周りが違うって言っても“”自分は信じて戦う”。素敵だなって思いますね。
アクションはギリギリなこと、やってる。でも、お客様が喜んで下さるなら、喜んでやりたい
Q 舞台化される部分、ニルヴァーナ編、単行本でいうと16~20巻、敵役がめっぽう強いんですよね。
宮崎:なかなか強いですね、今回は(笑)。魔法で戦うので、そこに説得力をつけて……まだまだ、本当に難しいんです。実はどんな映像が出来上がってくるのかわかってないんです。
Q 楽しみでもありますね。
宮崎:そこに芝居のせて戦ったり……六魔将軍が6人揃ってるところなんか、かっこいいんですよ!
Q 郷本さんの役が一番怖そうですね。
宮崎:こういう役、どっしりした役、似合いますね!キャストが発表された時もブレイン/ゼロ役で郷本さんがいれば大丈夫だな~、と凄いホッとしました(笑)。他の作品、ミュージカル『薄桜鬼』などでお世話になってますけど、本当に、凄いプレイヤーで、でもいつもニコニコしていて、いいお兄ちゃんって感じです(笑)。小野健斗君(ヒビキ・レイティス役)がいたのも、僕としてはホッとしましたね。
Q 本当にアクションシーンが楽しみですね。
宮崎:原作知らない人もたくさんいると思うんです。僕もこの間、戦うシーンの稽古をしましたが、いろんな意味で”骨、折れるんじゃないか”って(笑)。本当に油断したら骨、折れるなって(笑)。でも、それでお客様が喜んで下さるなら、喜んでやりたいし、なかなか、こういうバトル中心の作品でないと、こういうシュチュエーションはないので楽しみにしていて欲しいですね。
Q 原作のバトルのシーン、見開きで、書き込みが細かくって凄いんですよね。
宮崎:はい、本当に凄い!アクション付けて下さっている方も、ずーっとマンガと睨めっこで、「これ、やりたいね~」とか、印象的なカット、マンガのコマ割の再現、細かくて、凄くこだわって作っているので、だから、ホントに楽しめます!原作読んでいてストーリーがなんとなくわかっている人も、めちゃめちゃ原作読み込んできいてる人も、原作よんだことがない人でも楽しめる作品だなと思います。
Q アクション指導の人は本当に大変ですね。
宮崎:アイディアがあってもあってもキリがないんです。キャラクターによって戦い方が違うし大変だと思いますが、戦いのシーンを観ているだけでも凄く興奮すると思います。映像も凝っていて、子供でも楽しめるようにしたいですね。
宮崎秋人っていう人間は常にニュートラルな存在でいたい
Q 皆さんに伺っているのですが、俳優という職業を選んだきっかけ、理由は?
宮崎: 続けていこうって思った理由は俳優に向いていないから、ですね。学生時代、スポーツも勉強もわりと出来た方だったかな?と思うんですが、お芝居に触れた時に”これは努力しないと一歩も前に進めない、才能ないな”って。初めて経験した挫折だったんです。それでこの仕事、一生やりたいなと思いました。もともと俳優になろうと思ったのは凄く単純で、小学生の時にお世話になった先輩を追いかけて、その人に会いたいなと。それだけで来たんです。現場で会えたらいいなと……でも芝居の原動力は”才能がないから”(笑)。
Q 自分にとってハードル高いから。
宮崎:やらなきゃ前に進めない環境が、これでした。たぶん、他にもあるのかもしれない。でも、最初に出会ったのがお芝居だったんです。
Q こういう俳優さんになりたいっていうのはありますか? 宮崎:ニュートラルな俳優になりたいって思いますね。俳優さんの中では個性が強い方もいらっしゃいますが、自分は正直、個性ないなって(笑)。宮崎秋人っていう人間は常にニュートラルな存在でいたいなって思います。
Q 最後に観にきてくれるお客様に、一言、締めで。
宮崎:『FAIRY TAIL』は、原作の力が強いので、原作ファンのパワーに負けないように、演出の児玉明子さんを信じて、役者陣も役に血を通わせて、舞台上で生きるこのキャラクター達の生き様を観に、劇場に会いにきてください。お待ちしています!
宮崎秋人(みやざき・しゅうと)
1990年生まれ。東京都出身。俳優集団D-BOYSのメンバー。
主な出演舞台『ミュージカル「薄桜鬼 斎藤一篇」』『「弱虫ペダル」箱根学園篇 ~眠れる直線鬼~』『東京喰種トーキョーグール』『Dステ17th「夕陽伝」』『AGAPE store「七つの秘密」』『つかこうへい七回忌特別公演 新作未発表戯曲「引退屋リリー」』など。
[出演] 宮崎秋人(俳優集団D-BOYS)/愛加あゆ/白又 敦(俳優集団D-BOYS)/佃井皆美/桃瀬美咲/郷本直也/古谷大和/山本一慶/伊波杏樹/伊藤千秋/クリス・マッコームス/富岡晃一郎/小野健斗/熊野利哉/小澤 廉/荒木宏文(俳優集団D-BOYS)/釘宮理恵(声の出演)/堀江由衣(声の出演)
[公演データ] ライブファンタジー『FAIRY TAIL』
2016年4月30日〜5月9日 サンシャイン劇場
http://www.fairytail-stage.com
©真島ヒロ/講談社
©「FAIRY TAIL」舞台製作委員会2016
撮影/洲脇理恵(MAXPHOTO)
取材・文/高浩美