3幕はカラフルな体操着姿のコーラス隊が「夜は悪だくみをするとき」と歌い、「稼ぐのは昼で遭うのは夜」と歌う。フムフムと思う瞬間、夜は“大人の時間”、しかも品行方正とはほど遠い夜だ。胸ときめき、ちょっと悪いことをする時はワクワクなスリルとほんの少しの後ろめたさ、そんな真逆の感情が交錯する。さて熟年夫婦に長男カップル、次男カップルの狂おしき真夏の一日の顛末は……??
キャストにはオペラでは実力者が集結、このオペラの主役である大島幾雄演じるのは好色で浮気者でしょうもないおっさんキャラクター・院長の大石恭一、貫禄たっぷり、よく響くバリトンで魅せる。その奥方である大石夫人には佐藤しのぶ、日本を代表するプリマドンナであるが、夫の浮気に悩みつつも常に品格を失わない、流石な歌声で魅了する。長男夫婦にジョン・健・ヌッツォと小川里美、ゲイの次男に大山大輔、その恋人がカウンターテナーの村松稔之。この2組もコンビネーションが抜群、安定感もあり、ここは見どころ。カウンターテナーの村松稔之の歌声が透き通るようで、「これじゃあ男でも……」と思わせる。また佐藤しのぶとの二重唱は2人の歌声の重なり具合が惚れ惚れする。ジョン・健・ヌッツォと大山大輔、わかりやすく言うといわゆる“イケメンボイス”、ここでの役どころは長男は芸術家、次男はゲイで自由人、わかりやすいストレートなイケメンではなく、悩み、迷い、それでいてコミカルなシーンもあり、魅力的な歌を聴かせる。長男の妻の小川里美はコケティッシュ、愛人役の小林沙羅、狂言回し的な立ち位置でありながら、物語のキーを担う。ちょっと策士的でありながらも女性のたおやかさもあって全体のスパイス的な存在感。