【3.0レポート】PARCO & CUBE 20th Present 『人間風車』

売れない童話作家の平川(成河)の奇妙で不思議な童話、これを【劇中劇】にして見せるのだが、これがやたら可笑しくシュール、客席からは分単位で笑いが起こる。則明(松田凌)ら、子供達、もちろんいい歳の大人が演じているのだが、やたらテンション高くこれも笑いを誘う。登場する変な王様やコミカルな騎士、良知真次と矢崎広の騎士コンビ、真面目にやればやる程、笑いのツボにハマっていく。子供達と一緒に童話を聞く青年・サム(加藤諒)、いかにも粘着質な感じの視線、それだけでもちょっとホラーだ。
前半はとにかく笑いの絶えないシーンが続くが、これは後半の恐怖の序章にすぎない。チャラい雰囲気のテレビディレクターの小杉(矢崎広)のところに行き、そこでタレントのアキラ(ミムラ)と知り合い、淡い恋に。平川はどちらかというと地味なルックス、今迄、ヘンテコな物語ばかり書いていた平川は、ある作品を仕上げ、友人の親友の国尾(良知真次)に見せる。「凄いじゃないか!」平川は国尾に託すが、そこから一転する。舞台の空気も変わり、それまで笑っていた観客を恐怖の場面に引きずり込む。
成河演じる平川はどちらかというとうだつの上がらない風貌で、見た目もパッとしないが、観客を物語に引き込んでいく。後半の立ち向かっていく様は腰がひけつつも勇気を絞り出す様はパワー溢れ、俳優としての底力も感じる。弟想いの優しいアキラ演じるミムラ、優しさに溢れたキャラクター作り、サム演じる加藤諒、最初から「コイツ、ヤバい」といった空気感、後半は強烈で、作品を知っている観客なら「キター!!」というパワーで存在感を示す。

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2.5news(編集部)

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