【インタビュー】ミュージカル「パジャマゲーム」翻訳・訳詞の高橋知伽江さん

「ミュージカルコメディの本当の王道はこれだ!と。間違いないな!っていう感じですね、楽しさは!」

--さて、いよいよ「パジャマゲーム」の話に。元々は1950年代の王道ミュージカルですが、近年リバイバル上演されて、作品の魅力について、訳詞・翻訳した立場から。

高橋:これが“王道”なんだなってしみじみ思いました。最近の作品って非常にメッセージ性が強かったりしますが、そもそもミュージカルはミュージカルコメデイから生まれた訳です。そのミュージカルコメディの本当の王道はこれだ!と。間違いないな!っていう感じですね、楽しさは。と同時に北翔さんの歌が凄いです!パーンと強く出した時の張りとか、力強さがありつつも、同時に可愛らしさがあって、よくこんなにぴったりなヒロインがいたなって思う程、合ってますね。それと周囲の人たちがね……主役の2人のロマンスもあるんですが、それ以外の恋……いけない恋もあったり、親子の関係もあったり、男の友情もあったりして、そういったものが凄く上手に入ってるんですよね。ひとつひとつの要素が粒だっていて、上手に盛り込んでいるなと思います。いろんな意味で何回観ていただいても、面白いかもしれない。

--相関図だけを見ても面白いですね。経営する側と労働者と、また、この人とこの人が“ハート”で(笑)、この人とこの人は~ちょっとそりが合わないとか(笑)

高橋:そう(笑)。たぶん、オフィスの中の人間関係って皆さん、だいたい体験もしているでしょうし、「なんか、わかるな」と思ったり「ああいうタイプの人っているよね」っていう風に思ったり(笑)。きっと楽しんでいただけるんじゃないでしょうか。

--本当にいそうな人、いますね。こういう作品がリバイバルで上演されるってことは、普通に今の人が観ても共感出来るキャラクター、人物がいるからでしょうね。

高橋:古い作品とは感じないですね。もちろん携帯電話は出ませんが(笑)、人と人との感情的な繋がり、そういうのは普遍性が強いですね。

--オペラの古典作品に通じる普遍性、ありますね、どこにでもありそうな人間関係。

高橋:登場人物の1人1人が愛すべき、全然完璧でない人達なんですよね。

--訳詞や翻訳で特に心がけたところは?

高橋:この作品に限らず、必ず、いつも一回聞いただけでわかりやすい言葉を使うことを心がけています。お客様が「今、何て言ったのかな?」って思ったらその作品から意識が離れてしまうので、出来るだけ、英語は混ぜないようにしている。今回、難しかったところは2つあって、ひとつはスタンダードナンバーになっている「スチームヒート」とか「ヘルナンドス・ハイダウェイ」等の有名な曲を訳すことのプレッシャー(笑)。あとは時代的にスローなラブ・バラードが多いこと。ゆったりとしているので、英語の場合はひとつの音符にひとつの単語が入っている、だからたくさんのことを言えるのですが、一音一字が原則の日本語では意味が“入らない、入らない”(笑)、どうしたらいいのかしら??って……一生懸命エッセンスをギューとまとめたつもりです。最近のミュージカルナンバーはもっとテンポが速いものが多くて、わりと英語と同じくらいの意味が入れられることもありますけれど、今回のラブ・バラード系は悪戦苦闘でした。でも、凄ーく甘いメロディがいっぱいあります(笑)。とくに新納さんや北翔さんのナンバーは甘いですね。(笑)

--英語と日本語の言語の違いの壁を乗り越えて……歌っている登場人物の心情を……。あとは「ここを観て欲しい」ところは?まあ全部は全部ですが(笑)。

高橋:このコメディ特有の歌があって、栗原さんや阿知波さんが歌われるナンバーなんですけど、「普通これを歌にしないだろ」っていうおかしな話が歌になっている。

--歌にしなさそうなところをあえて歌にしている……。

高橋:そうなんですよ!例えば栗原さんはいかに時間を大事にしているか、ということを朗々と歌うんですけど、それが「あなた、凄く変な人だね」(笑)っていう歌詞なんですよね(笑)。他のミュージカルでこんなに可笑しい、面白い曲ってないんじゃないかな。是非、一緒に楽しんで頂きたいですね(笑)。

--そこはポイントですね。

高橋:あとは、ダンス!「スチームヒート」は絶対に凄いと思います。

--皆さん、踊れますもんね。

高橋:踊れるキャストが揃っていますが、歌唱も!アンサンブルの方のコーラス、男性三部、女性三部、凄い複雑なコーラスがついていたりするんです。それを踊りながら歌う訳ですから……俳優さんは大変!「観る天国、やる地獄」って、こういう感じ(笑)。でも笑顔でやらなきゃならない、小道具なども使うので凄くやることが多いですね。「パジャマゲーム」ってタイトルは有名ですけど、どんな話なのかはだいたいの方は知らないと思うんですね。

--タイトルだけはかなりの方が知ってると思いますが、どんな話かは意外と知らない、上演されることに意味があると思いますね。

高橋:そうですね。今迄、「どんな話なんだろう」って思いながらも観られなかった人って結構いらっしゃると思うんです。「ミュージカルコメディっていうのはこれだ!」と……そんな感じでご覧頂けるかと思います。

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2.5news(編集部)

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