【インタビュー】ミュージカル「スコア!」「DAICHI」プロデューサー、脚本、作曲、まきりかさんインタビュー

「キャストさん、スタッフさんは、ご縁……必ずそこに来る人がだれかいる、惹き合わされる、みたいな瞬間の連続ですね」

--「スコア!」は面白そうですね。キャストさんも個性的な方が揃いましたね。

まき:ユニークな皆さんにお集まりいただきました!私は昔、東京ミュージカルキッズという一般の子向けのミュージカルスクールをやってたんです。プロ養成ではなく、お稽古ごと&情操教育として、ミュージカルを使って表現力豊かな子を育てるというものだったんですね。その生徒たちのために何作かオリジナルのミュージカルを書いていたんです。その時はそこにいる子たちに「当て書き」したんです。

--演じやすいですよね。

まき:そのひとつが「スコア!」という作品です。「面白いからプロでやりなさい」っていうお話を頂きまして。初演が2012年の12月、それが私のデビュー作なんです。おかげさまで、シアターグリーンBigTree Theaterで2回、博品館劇場で1回、合計3回上演してきたんですけど、博品館劇場では脚本と曲の提供のみで製作には携わりませんでした。次に上演するならば自分でもう一回書き直したいし、プロデュースし直したいと思っていました。「スコア!」は最初はジュニアミュージカルとして書いたものの、もっともっと深い作品になれる要素をたくさん持っていました。数学と音楽にまつわるストーリーなのですが、日本数学検定協会の理事の方が初演をご覧くださったご縁がずっと続いていて、今回特別協賛として応援して下さるということになりました。それで、大人の物語として大リニューアルしようということになりました。主演には岡幸二郎さん、去年に一緒にお仕事させて頂き、その時から「スコア!」の主演を絶対にお願いしたいと密かに思っていて(笑)、説得して引き受けて頂きまして、これもご縁!また、物語には2組の夫婦が登場するんですが、これが対照的なのです。池谷京子さんは教育ママ、その旦那さんはあったかい人柄で、演じるのは田上ひろしさん。のんびりと「いいじゃないか、子供はのびのびで~」みたいなことを言って夫婦喧嘩になる(笑)。かたや、冷たい感じのお医者さんの羽田圭介さんと、抑圧されている妻でこれを演じるのが水野貴以さん。貴以さんは元アニー役だったので子役たちにとっても憧れの存在です。それで旦那さんをどなたにお願いしようかと考えてた時にふと羽田圭介さんのことを思い出して(笑)。オペラをずっと習っていらしてステージで披露しているのをTV番組で観てたときに……出演していただいたら、面白いんじゃないかと。それはもうヒラメキです(笑)。それで、今年のお正月に『富士ファミリー』という新春のドラマで羽田さんが役者デビューをされてたので、NHKさんにツテをたどって『富士ファミリー』のプロデューサーさんを探し、「ミュージカルの出演依頼をしたいので連絡を取らせていただきたい」と頼みました(笑)。それでお会いして、お願いをして、お引き受けてくださったんです。

--つてをたどっていって会えた訳ですね。

まき:基本的にはそういう人の繋がりを大事にしています。キャスティングを進める時は、役にあったイメージや実力はもちろんのこと、話題性とか集客とか、プロデューサーとしては色々と考えなくちゃいけない時もあるんですね。ですが、新しい作品を創るには「ひとつのエネルギー体」を作ることが凄く大事だと思っているんです。キャストさんやスタッフさんはその構成員となる人達であるので、ご縁というか……必ずそこに来る人がだれかいる、惹き合わされる、というか、そんな瞬間の連続ですね。私のキャスティングについては「面白いところに目をつけますね!」って結構言われるんですけど、そういうところで選んだり考えたりしてるから、結果として型破りなキャスティングになるのかな?と思います。また、自分で脚本・作曲しているからこそ、「この人をこう輝かせよう」という算段があって、それを考えながらキャスティングしている部分もあります。キャストのファンの方々もまだ見たことのない姿というのを、作品の中で輝かせていけたらいいな、と常に思ってますね。

--ご自身で作曲なさるので音楽付きは当然ですが、音楽付きのお芝居はミュージカル以外には例えば、音楽劇とか、ストレートプレイでも音楽が入るものもあると思うんですが、ミュージカルにこだわる理由はございますか?

まき:こだわってはいないんですよ、ただ、元々、私が作曲の仕事をしてきて、ミュージカルスクールを経営したことから、脚本書くようになって……現在に至るので、それでミュージカルなんです。でも、作業としては、音楽と脚本を書くのは、実はほぼ同時なんですね。詩を書いてあとで曲を入れているのではなく、音で書いてるところがありますね。だから台詞もリズムの中で書いているという感じです。脚本書いてて、登場人物の感情を考えたら「ここは……歌でしょ」っていう……自分の中では、そこで自然に歌っている(笑)。

--やってるうちに「ここは歌だな」……「歌、入れちゃえ!」みたいな感じでしょうか。

まき:そうそう(笑)書いてて、その人がここまで会話をしたら、次にその心情を語る、表現する、お客様に伝えるには私の中では歌でしかない、ですよ。曲も歌も同時に書いているんですよ。ピアノに向かったり、パソコンに向かったりして書いています。

--絵が浮かびます(笑)、要するにパソコンが隣りにあって、そしてピアノがあって……。

まき:そんな感じです(笑)。それが自分の表現方法なんです。ミュージカルっていうジャンルだからミュージカルって謳っているし、もし、台詞の中に歌を入れない、歌い手さんがいたりする音楽劇っていう企画が面白いな、と思ったらそれはそうしてもいいかなって思います。ただ、私は音で書いているので、立体的な画のイメージはあまりもってないんです。デビューから5年で約20作品ぐらい書いてきたので、さすがに最近はわかってきましたが、以前は第一稿では “どうやって転換するの?” “ここ、着替える時間ないよね”ってシーン多発でした(笑)。

--だんだんやってくうちに(笑)

まき:学びました(笑)

--「ここで舞台転換」とか(笑)

まき:そうそう、“こんなことを書いたら演出家はきっと困る”とか(笑)。お芝居のことを何もわからず始めたので、脚本書きながらだんだん覚えてきたようなものですね。だから演出は自分には絶対に出来ません(笑)、完全に別分野だと思っています。作曲に関しては、私はメロディーを書いて、ピアノで仮音源を作るところまでです。編曲・音楽監督は必ずどなたかにお願いして、作品ごとのテイストで組むかたも変えます。むしろ、いろんなかたと組んで音楽作りをしたい気持ちが強いですね。そのほうが良いものができるし、何より楽しい!演出家、音楽監督、その組み合わせで作風が色々変わるので、それが自分の特徴とか面白さかなとは思っています。ご自分で脚本を書いて演出もされる人が結構いらっしゃいますし、脚本と作詞をして曲だけを作曲家に任せたり、とかはいらっしゃると思うんですけど、私の創り方はきっと特殊ですね……私は0(ゼロ)から1を創ることは得意だけど、それを2や5や10や100にしてくれるのが演出家さんや他のクリエイターの皆さん。そういう心持ちでいるので、その考え方が合う演出家さんと一緒にもの作りができると本当に楽しいです。

--つまり、演出家さんと組むにあたっては、まきさんの考え方に共感出来る方ですね。

まき:考え方というか、私は、全く演出にまったくと言って良いほど口は出さないんですよ。それはさっき言ったように、自分は音で書いているので、演出のことで言えることなんて何もないからなんですけど(笑)演出家さんの中には細かく「ここはカットさせてください」と申告して下さる方も。でも、「全然、全然!大丈夫ですよ」「お任せします!」みたいな感じで……こだわりはないんですよ、一字一句、変えてくれるな、とか全くないです(笑)もちろん1曲、1曲、1語、1語、意味をもって魂をこめて書いてますが、演出家が立体にそれを立ち上げた時に「ここはもっとこうした方がいい」っていうのはあって当然なんです。私は演出家さんの感性を信じるし、それが楽しみでもあります。通し稽古とか、私っていいお客さんなんです(笑)。笑ったり泣いたりして(笑)。

--わかりやすい(笑)。

まき:2次元で書いていたものが3次元になって立体化される楽しさって!(笑)作家としては呑気過ぎるくらいです。あ、プロデューサー的に「すみません、ここでこんなにカツラつけかえる予算ないので、あきらめてください」と言ったりはします。そういう意味で口は出してますけど(笑)。

--確かにこういう作り方している舞台作品はあんまりないですよね。

まき:そうなんです。

--最後になりますが、いわゆる締めですね、「スコア!」と「DAICHI」2作品、締めをお願いします。

まき:「スコア!」を書いたのが2010年で、ちょっとしたスピリチュアルブームが起こりましたが……今、スピリチュアルっていう言葉自体はあんまり使わなくなりましたね。パラレルワールドとか、量子力学、とか宇宙の謎が科学的に進化し、解明されてきました。昔だったら前世とか、生まれ変わりとかオカルト的なものとして扱われがちだったようなことが、わりとこの何年かで普通に受け止めてる人が多くなったなって感じがするんです。「スコア!」は宇宙の話で自分が何でここに生まれてきたのか……生まれた意味を探るのがテーマなんです。で、初演から7年経ったので、それを深めたい、大人も子供も……むしろ大人がどうして、なんのためにここにいるのか、自分はどこから来たのかっていうことの答えを探す物語なんです。その案内人となるのが、岡幸二郎さん。そして、登場人物たちをサポートする数字の精、音符の精という見えない存在たち。宇宙の中で、この地球に生まれた自分が、今ここにいる意味を探すっていう、壮大だけど凄く内的なファンタジーですね。観てくださったかたがそれぞれ、自分に置き換えられる物語だと思います。自分が生きる意味……そういうことで悩んだりすることって誰しもが経験ありますしね。

--たぶん、みんな漠然と持っていますよね。

まき:漠然と思っているところへ、ポチってボタンを押すような作品になっていると思います。ピンときたら一回は観てもらいたいファンタジーです。

--秋には「DAICHI」も上演ですね。

まき:「DAICHI」もこれで三回目になるんですが、今回はキャスト一新で、鈴木蘭々さんや西川大貴さんが出演、リニューアルされます。キャストの多くはオーディションで選出します。これも命の話で、実在する女性の物語です。4歳で亡くなった息子が魂として出てくるんですね。これは、もう、自分で作っておいて感動作!と言うのはなんですが(笑)キャストスタッフで大切に育ててきた、特別な作品です。それを繋いでいくための公演が今回です。是非!泣きにきてください!あ、でも笑もあります。笑って泣ける、いつもそれは大事にしているので(笑)。

--「DAICHI」も「スコア!」も笑って泣いて!で締めませて頂きます。

まき:どちらも幸せ深く幸せになる作品です!

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2.5news(編集部)

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