2017年7月14日銀座ヤマハホールにて、6~8月に数回開催される『L’ ge d’Or de la Chanson ~シャンソンの黄金時代2017~』に龍真咲が出演した。
7月14日といえば、フランス革命記念日。パリでは航空ショーやシャンゼリゼ通りでの豪華な軍隊パレード、そして夜にはエッフェル塔を大々的な花火が上がるほど、フランス人にとってはなくてはならないお祝いの日。そんな記念すべきこの日に龍真咲の出演と聞けば、宝塚時代にフランス革命を扱った出演作「1789」や「ベルサイユのばら」を思い出さずにはいられない。革命に燃え、革命に散ったあの熱演から時を経て、男役トップスターを卒業した今、MUSEではJPOPや宝塚・ミュージカルでの名曲を披露したが、今回は今まであまり龍から聞いたことのないシャンソンというジャンル。期待に胸を膨らませたファンも多かったのではないだろうか。
ピアノ・ベース・アコーディオン・チェロ・パーカッションでのインストルメンタル「La Mar」に続いて、「君を待つ」が始まると、黒と白のロングドレス、そして豊かなドレープのアップヘアに白い花飾りで登場した龍。MCでは「今までシャンソンは難しそうで敬遠していた」と控えめに語ったが、なかなかどうして。越路吹雪に思いを寄せて歌った「愛の賛歌」では、情感豊かな歌声と、さらに女性らしい柔らかな高音が加わり、ひとたび歌い始めれば、”シャンソン×龍”、その素晴らしいマリアージュに身も心も引き込まれる。
スペシャルゲストに訪れたのは音楽プロデューサー・高橋まさひと。ファンには嬉しい龍真咲の裏側を話し、トークに強い彼女が高橋の絶妙なツッコミにたじたじとさせられている、その攻防戦も新鮮で客席を沸かせた。高橋は龍の退団公演で久々に宝塚を見て「龍にしか醸し出せない情感」に瞠目したとのこと。特に宝塚100周年公演「TAKARAZUKA花詩集」にて、「黒きばら」を元とした龍の「Black Rose」を聞き、“こんな風に違う時代に伝えられ、歌の命がまた伸びた気がした”とその時の感動を語った。古き良きシャンソンを歌い継ぐこの夜にふさわしいそのエピソードに続いて、ただでさえ距離の近いヤマハホールの客席に降り「桃の花咲く丘」を、そして「黒きばら」を歌い上げた。
続いては龍の代表作であり、来春も期待の寄せられる「1789」から、ロナン役としても心に残る「二度と消せない」「この愛の先には」「サイ・ラ・モナムール」「肌に刻み込まれたもの」の豪華な4曲。前奏を聞くだけで宝塚時代の記憶がよみがえり血が沸き立たつ。ちょうどこの日15時に発売発表となった「ヴェルサイユ宮殿 公式写真集」(筑摩書房)では、龍が日本でのオフィシャルサポーターを務めることにもなり、どこまでもフランスに縁があるようだ。そんなフランスのまだ行ったことのない”パリの秋”に想いを馳せて、宝塚でのデュエットダンスでも思い出深いという「枯葉」、そして映画「紅の豚」で初めて聞いて大好になったという「さくらんぼの実る頃」を披露。このさくらんぼ〜は、いつか歌って見たいと熱望していたが、今までの自身のキャラクター的に、なかなかそのチャンスが無かった、でも、今日はどうしても歌いたかった、今後も大切に歌っていきたい曲の1つとして語り、ピアノ一本で、しっとりと、せつなく歌い上げた。
最後は「おおシャンゼリゼ」で会場も一体となり盛り上がる。今までの落ち着いた曲調からの変化はもちろんだが、龍の晴れ渡るようなさわやかな笑顔には、どうやらこちら側の心も踊りださせるパワーがあるようだ。最後の挨拶では衣装を間山雄紀、ヘアメイクは黒田啓蔵と紹介をし「いろいろな事を一人でやっていくのは難しい、今はたくさんの方に相談も出来、助けてもいただき、支えてくださることが幸せ」と、単独で活動し始めた中での感謝の意を示した。
冒頭のナレーションで「シャンソンは人生の歌。そして人生は一編のシャンソン」と語った龍。この若さにして、惜しげもなく今の想いを歌に込めて全身で歌い上げ、舞台でもなく、歌い込んだ曲でもなく、今日初めて龍から聞くその曲が、しかしこれまでの龍の歌の中でも最高峰と思わせてしまうその力にただただ感服である。派手なビジュアルや奇抜な発想、奇想天外な陽の印象が強い龍だったが、いったいこの人は、本当はどういう思いでこれまでの日々を重ねてきたのだろうかと、その内面にも興味が尽きない日であった。
先日発表されたCD「L.O.T.C 2017」でのメジャーデビューに続き、Bunkamuraオーチャードホールでの「龍真咲コンサート2017」、奈良・金峯山寺での「世界遺産コンサート」等々、今年の龍はさまざまなジャンルの音楽にかかわり、そして来春は「1789」を今度はマリー・アントワネットとして務める。このスピードで多くを吸収し人生を積み重ね、また来年、そして5年後、10年後、龍の人生を綴ったシャンソンがどう変化し深みを増していくのか、楽しみで仕方なくなってしまった。
【文/AIKO 写真提供/スペースクラフト】
2017年8月26(土)
(1)開演12:00(開場11:15)
(2)開演16:30(開場15:45)
2017年8月27日(日)
(3)開演14:00(開場13:15)
Bunkamuraオーチャードホール
全席指定 10,000円(税込)
※未就学児童入場不可