誰もが知っている童話作家、アンデルセン。このミュージカル、現在劇団四季によって全国公演中だ。1952年の映画「アンデルセン」を元にし、舞台作品として1974年にロンドンで初演された。劇団四季ではこのロンドン版のストーリーを基に、舞台美術や振付、衣裳などでオリジナルの演出を加え、1983年ニッセイ名作劇場として初演。以降、幾度かの改訂を繰り返しながら、作品をブラッシュアップしている。
元になった映画はマイルス・コノリーがストーリーを書き、映画「紳士協定」で知られるモス・ハートが脚本を担当、監督はチャールズ・ヴィダー。作詞作曲は「ガイズ&ドールズ」や「ハウ・トゥー・サクシード」等で知られるフランク・レッサー。劇中バレエを振り付けしているのはパリ・バレエ団のローラン・プティ、主演はダニー・ケイとなかなか豪華な布陣だ。
さて、舞台版でもそのメロディが味わえるフランク・レッサーの曲、特に「ワンダフル・コペンハーゲン」は一度聴いたら忘れられない曲、その美しい旋律はレッサーらしい珠玉の名曲だ。主人公・ハンスの恋愛を軸にし、アンデルセンの代表作「親指姫」「人魚姫」「みにくいアヒルの子」「はだかの王様」を織り込み、心温まる物語が展開される。
心優しい靴屋のハンス、夢のような物語を語り、子供たちはその話に夢中になり、彼を慕うが、大人たちはそんなハンスを快く思っていなかった。世間体や道徳、常識にとらわれている“立派な大人たち”は、ハンスを理解出来なかったのである。ハンスは弟子のペーターを連れてコペンハーゲンへと向かい、そこで運命的な出会いをする。王立バレエ団の美しいプリマ・バレリーナのマダム・ドーロに一目惚れしてしまう……というのがだいたいのストーリーだ。
このミュージカルの見どころは数多くあるが、やはり何と言ってもダンスシーンであろう。バレエシーンは劇中劇にしてはあまりにもクオリティが高く、これだけ独立させてもいいくらい。また随所に見られるダイナミックなダンスシーン、ジャズダンスの躍動感とクラシックバレエのたおやかで品のよいテイストが上手く混ざり合った感のあるダンスで、ここはダンススキルが高い劇団四季らしいところだ。
流麗な音楽、エンターテイメント要素たっぷりのダンス、絵本を広げたような楽しさに満ちたミュージカル、子供はもちろん、大人も楽しめる。しかし、楽しいだけでなく、考えさせられる要素も含まれている。純粋な心を忘れたら本質は見えにくくなってしまうこと、思いやりを持つこと、無条件に人を愛する気持ち、そもそもアンデルセンの童話は、自分の経験や社会情勢をベースに、子供の心を豊かに育むために書かれたもので、そこがグリム童話のような昔話と大きく異なる点だ。自らの人生を「豊かで幸せな1篇の美しいおとぎ話」と回想したという世界的な童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセン。尽きることのない想像力と弱者への深い愛情、そして痛みや挫折から見える光と希望、世紀を超えて上演されているのも頷ける。
<出演者コメント>
ハンス・クリスチャン・アンデルセン役 鈴木 涼太私が初めて観たミュージカルが、この『アンデルセン』でした。愛に包まれていて、観ている方みんなが優しくなれるこの作品です。ハンスが困難に立ち向かい前向きに進んでいくこの舞台を姿を多くの皆様にご覧いただきたいと思っています。お近くの劇場でお楽しみください。
【公演データ】
ミュージカル「アンデルセン」
2017年7月15日〜2017年12月21日 78都市107公演予定。
予約方法:SHIKI ON-LINE TICKET http://489444.com(24時間受付)
劇団四季予約センター:0120-489444(午前10時~午後6時)
お問い合わせ:劇団四季全国営業部 045-903-4659