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【インタビュー】「ヘタリア〜in the new world〜」演出家・吉谷光太郎さん特別インタビュー

吉谷光太郎

“無駄に壮大に”、っていう言葉がみんなの共通言語になっていって、そこから、なんかでっかく広がっていった感じですね

--第1作目、2作目、特に1回目ですが、初めて舞台化、色々と大変だったと思います。そもそものマンガがストーリー仕立てではないですが、それをストーリー仕立てにして、しかもミュージカル仕立てにしているという点、誕生までの大変だったところとか……ちょっと遡って恐縮です。

吉谷:最初は手探りで、色々とアイディアを出し合って、それこそ、ショートショートみたいなイメージがあった時もありました。最初の台本では、シーンが変わるたびに「ヘタリア」って言う(笑)いわゆるアニメの、世界観ですよね(笑)……話し合っている過程で、無駄に壮大にいきましょう、“無駄に”って言うキーワードが、出てきたんですね。とにかく感動的にする、壮大にしていきましょうと。いわゆるショーのパートとかでは小ネタを下敷きにしていますが……その小ネタを膨らませて歌やダンスに繋がっていけば、いいんじゃないかなと。稽古場でもだんだん“無駄に壮大に”っていう言葉がみんなの共通言語になっていって、そこから、なんかでっかく広がっていった感じですね。でも、小ネタだけでは壮大にはなりきらないので、例えば国と国の思想の話などを描くわけなのですが……一番苦労したのは、宗教的な考え方、そこに下手に触れちゃうと物語とは別の方向、思想的な方向にいってしまう……そうすると楽しく観られなくなる、だから、そこの部分にはいかないようにする……あと、戦争っていうものを扱う時に直接的な攻撃はしない、キャラクター同士はあくまでも戦わない、小道具の銃を出す時も相当、気を遣いましたね。劇中で銃は存在してます。“撃つ”っていう動作を、一作目はやらなかった気がします。唯一、ガイザーヴィルヘルムっていうドイツが作った大砲があって、パリに向かって撃つ大砲、略称がパリ砲っていうんですが……でも台本が出来た時にパリ同時多発テロ事件が勃発しまして、そこでパリ砲っていう名称はやめましょうと。その当時はそういうことがあったので……非常にセンシティブな問題ですからね。

--デリケートですよ、それは。

吉谷:パリ砲使ってほとんど命中しなかったみたいな。そういうエピソードを取り入れることは物語として考えたら面白い部分ですけどね。ちょっと難しい部分やお客様がひっかかるポイントとかを探りながら、「もしかしたら、ここはいけないことなんだからやめましょう」とか「ここはこういう見せ方の方がいいよね」とか、そこにいきたいんだけども、そうすると、意図していない部分を想起させてしまう、楽しく観られない、というのは外していったので、見せ方の制限っていうのは結構あった気がしますね。その中で本番を経て、「ここらへんまではイケルんだ」みたいなお客様との距離感をつかんでいきました。

--「ヘタリア」っていうマンガ自体が……原作読んだときに面白いんですが「さわっちゃいけないところ多いよね」って(笑)。じゃあ、舞台化する時にそこのところをどうするのか、どう切り抜けるのか……。

吉谷:でも、エスニックジョークって結局、そこに触れないと面白くないんですよね~。国の性格的な部分は少し揶揄しないと、面白くない、キャラクターとしての生きてこない、平均値をとっても、面白くない。あとは上手くショーとして魅せる、ミュージカルにする理由はそこにありますね。たぶん、ストレートプレイにするとちょっと……。

--観てて、これはミュージカル化した方がいいんだなと改めて思いました。ストレートプレイ化するとたぶん、観客の頭の中で疑問符が……。

吉谷:そうなんですよ(笑)。ギャグで攻めていかないといけないから、こっちが意図している以上に、茶化してしまっているという風にとらえられると、こっちの意図していることとは全く別のことで引っかかってしまうので、そこは留意しましたね。

ミュージカルとしての凄く華やかな楽しい部分、かつ、切なく泣けるものにしたい

--いよいよ第3作目ですが、今までのキャラクターにプラス、新しいキャラクターも今回加わりますね。「ここは注目」という点は?

吉谷:新キャラクターが登場しますが、経験値の高い俳優の中に後輩みたいなキャストさんがスポンと入って、しかも彼らより「俺様、偉いぜ!」っていうキャラクターなので、そこを確実にモノにして飛び越えないといけない部分でありますね。その、飛び越えようとした時の推進力っていうんでしょうか、飛び越えようとしているからこその勢いで、高本学君(プロイセン役)自身が、変化して欲しいなと思っていまして、僕自身は彼の変化と成長、そう、今回のテーマは成長なんです!その成長っていうものに彼がのっかれるかっていうところが、ね!この歳になって、親心じゃないですけど(笑)、高本学君が役どころを介して飛び越えてくれるかどうかが見どころですね。彼がプロイセン役であってよかったっていう風には必ずしてもらおうと思っています。
パフォーマンスは、確実にレベルアップ!楽曲もちょっとレベルの高いものにしていまして、……役者の成長、ここはきちんと見せていきましょうと。だからパフォーマンスは注目して頂きたいと思っています。枢軸国の3カ国と連合国、1作目と3作目は、つながっています。2作目はイギリスとアメリカの連合国を主軸にしてましたが、第3作目は第1作目の話を深く掘り下げていきます。今回はいわゆる回想録ですね。3か国のそれぞれの回想を経て、今、彼らがどう思っているのか、っていうこと、そして国々が過去を経て、今、どういう風にしていくのか、どういう風に未来を観ていくか、っていうメッセージ……「ヘタリア」という作品自体は擬人化の話なので、だから我々も、ミュージカルの「ヘタリア」も物語を描くだけではなく、僕らも含めて今、生きている人へのメッセージとしてどう展開出来るかということを念頭に置いています。“NOW”の状態で皆さんがどう成長していくのか……成長することで見えてきたものが何であるかとか、それが明日への活力になっていく。また会えるその時まで成長しましょうねっていうことで、桜……そう桜もテーマで、キービジュアルにもなっています。桜は散って、また咲きます。その木の下で約束……別れたり、哀しいこともあったとしても、前を向いて、笑顔でみんなで楽しく、また、会えたらいいねっていうことですね。ミュージカルとしての凄く華やかな楽しい部分、かつ、切なく泣けるものにしたい……国っていうのを通して、人間各々の考え方の違いであったりとか、例えば、今の日本でも、いろんな人種の人がいて、いろんな考え方の人がいる。大変なことが起きても、共通している思いを大切にして、一緒にいる、楽しくやっていく方が、何倍も楽しいじゃん!色々あるけど(笑)、みたいなところにたぶん、持っていきます。
あとは美術面、1作目と2作目では、いわゆる2.5次元といわれている作品をいかに3次元にしていくか、近づけるかで考えていましたが、今回はちょっと2次元に戻っていこうかなと(笑)。本をテーマにしているので、いわゆる日記とか文献とか「ヘタリア」自体もそうですよね。歴史、過去のものっていうものを我々が知ることで、そこに大切な教えがあって「あ、これはダメなんだ」とか「こういうことやったら楽しいな」とか……想像力を使って、そういった“2次元”から得てきたものを大切にしたいなと、重要視していきたいなと。

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2.5news(編集部)

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