情熱と不屈の精神、逆境にも負けない主人公、固い舞台になりがちの題材であるが、ところどころに笑える場面を挟み込んで進行する。芝居部分、歌って踊ってのミュージカルシーンとのバランスもかなり考えられていて、時折笑いが起こるシーンもあり、ここはエンターテイメント。主演のなだぎ武、芝居巧者ぶりを見せるが、歌唱も味があって心に染み、空手で相手を倒すシーンは痛快。脇を彩る俳優陣、ナイキ社長の渡辺大輔は仕立てのよいスーツを着こなしてかっこよく踊り、よく通る声で圧巻の歌唱力、見せ場も多く、“王道ミュージカル”なシーンで活躍、モト冬樹も落ち着いた演技で盛り上げるが、ところどころに違う役で登場するので、ここはチェックポイント。優しくも強い母を杜けあきが厚みを持たせて見せ、リンダの父を演じる森田浩平は2幕で懐の深さを表現する。ただの美人妻でないリンダ、潤喜演じるなだぎ武の良き相方として時に優しく寄り添い、時には一緒にテンションアゲアゲで盛り上がる妻をドルニオク綾乃が軽やかに演じる。
年商250億円でアメリカンドリームを体現、単なるサクセスストーリーではない。終始、真剣に人と向き合い、人を愛し、人を信じて進んで行く男の人生賛歌になっている。“世界初演”と謳っているが、普遍性のあるテーマ、日本人でなくても共感出来る内容、多少時間がかかるかもしれないが、海外での上演の可能性を秘めた作品である。
2025年2月をもって、建て替…