主人公の半生を描くミュージカル、しかもバリバリ現役の吉田潤喜氏の物語、場面はトントンと進んでいく、しかも描かれている時代はさほど昔ではない。流行のプロジェクション・マッピングではなく、手描き調の映像を使って背景を創る。そのタッチがちょっと優しい。アメリカに渡ってからは苦労の連続、自由の国・アメリカとは言うものの、有色人種には厳しい国、人種差別が待ち受けていた。そこで潤喜の人生を大きく左右する人物に出会うことに。ひょんなことで空手道場で教えることになった潤喜。フィル・ナイト(渡辺大輔)、のちのナイキの社長、そしてジム・セネガル(モト冬樹)、こちらはコストコの社長になる人物だ。空手道場も開くこととなり、学校で“高嶺の花”と言われたリンダ(ドルニオク綾乃)とも結婚、子供に恵まれるが、なんと長女は生まれてすぐに黄疸にかかり、一命を取り留めたが、そこの病院での治療費がたったの250ドル。潤喜は感激し、稼いで恩返しをすると決意し、精力的に働く。またあるクリスマスで道場に通う生徒にプレゼントと思うがそこまでのお金はなく、思いついたのが母が営んでいた焼き肉屋の秘伝のたれ、これを作ってびんに詰めて生徒たちに配り、これが大評判、あのたれの“誕生”の瞬間だ。この波瀾万丈、かつドラマチックなことが次々と潤喜の身の上に降りかかるが、これをトントンとリズム良く見せる。良い事も悪い事も持ち前のパワーとその瞬間の潤喜の“直感”で人生を切り開く姿は観ている観客の心を熱くする。