舞台中央に母と子供、母は割烹着姿、子供は空手道着、これが物語の主人公・吉田潤喜の幼い頃の姿、それを成人した吉田潤喜(なだぎ武)が見つめている。少年が懸命に空手の型を繰り出す。大人の吉田潤喜が1人、歌う。和楽器を使った楽曲でそこからPOPな曲調に変わる。「かわいい子には旅をさせよう」と歌う母、今回登場する登場人物が出てくる。楽しいナンバーとなり、このミュージカルの概略がここでだいたいわかる。
物語が始まる、幼い頃の不幸な事故により右目を失明した潤喜を待ち受けていたのはイジメ。そんな息子に母の房代(杜けあき)は息子に強くあれと願い、空手道場に通わせる。空手の型もピシッと決まり、芝居もなかなか達者だ。空手が上達するにつれ、少しずつであるが、自信もついてくる。そして子役が学ラン、サングラスをつけ、そこにリーゼントヘアの懐かしい髪型の不良が大勢取り囲む。そしてこの不良たちをはねのけた瞬間、“大きくなった潤喜”、登場、ここは視覚的にも鮮烈だ。「強くなる」と言っても喧嘩ばかりしている不良になる……観客は「おいおい」とツッコミを入れたくなるところだが、そんな折、主人公は東京オリンピックやメキシコオリンピックをTVで視聴し、強い国・アメリカに興味と憧れを抱くようになる。母は息子の気持ちを見透かしたのか「アメリカに行ってこい」と、しかも「帰ってきたらアカン」とまで言う……。