なお、演出の藤田俊太郎より特別コメントも到着!
嬉しくて飛び上がって喜びました。5歳の時生まれて初めて観た芝居がホリプロ制作新宿コマ劇場で上演された「ピーターパン」でした。36年の歴史ある作品を演出できる幸せを噛み締めています。
1904年に小説が誕生してから長い時間をかけて世界中の子供たち、大人達の夢や想いがこの作品にはつまっていると思います。ミュージカルとしての素晴らしい台本、音楽。ピーターパンの輝き続ける躍動、溢れんばかりの煌めき、登場人物全員が作り出す大きな光。その大きな「光」と共に大きな闇の中にある「影」が一番の魅力だと思います。原作ジェームズ•M•バリの小説や絵本の中のピーターパンのセリフにあります「死ぬってことはきっとすごい冒険だぞ」。物語も、人生も芝居も終わりがあるからこそ永遠の輝き続けることができるというメッセージ。それがミュージカル作品の中にまるでピーターパンの持っている魔法の粉のように散りばめられていると思います。
「飛び出す絵本」のような作品にしたいと思っています。俳優がピーターパンという絵本や本を開いて、読み聞かせるようにお客さんに語りかけていく、音楽や歌を奏でていく。いつしか子供のお客様も大人のお客様も本の中から飛び出してきた登場人物たちと一緒に作品を体験している、つくっている。最後にはその本を劇場にいる皆で閉じて物語を終わりたい。実際のセットが飛び出す絵本なのではなくて、そう思える様々な演出的な仕掛けをしました。
37歳になる僕が日本での上演37年目、10代目の演出家として、10代目のピーターパン役を演じる吉柳咲良さんに出会いました。まっさらな気持ちで作品にも出会いたかったので、上演台本はミュージカルとしてのブロードウエイ初演1954年版をお願いしました。
その1954年版を1988年の上演で青井陽治先生が翻訳、訳詞されたものを底本に、青井先生がそれぞれの場、シーン全体をカットすることなく見事にまとめてくださったのが今回の台本です。音楽監督/作•編曲は今までと変わらず宮川彬良先生の素晴らしい音楽での上演となります。
10代目のピーターパン役を演じる吉柳咲良さん。全てがまっさらで、まっしろで才能と感性と魅力と大きな可能性に満ちあふれています。初舞台で、13歳。稽古を進めながら僕は教えているつもりで実はたくさんのことを教えられ学んでいます。まだかすかに子供時代が残っている彼女にしか演じられないピーターパン本当にせつなくて、本当に美しいです。
ピーターパンを演出することは僕の夢でした。僕自身2011年から虹艶Bunny(にじいろバニー)というバンドで自作の音楽劇をつくり、幼稚園や洋服屋さんで上演してきました。たくさんの子どもたちとの出会いや愛をこの作品に込めました。「ピーターパン」の原作のタイトルは「ピーターパンとウエンディ」です。ピーターパンという子供の目線、ウエンディという大人の目線、両方を楽しめるミュージカルを、素晴らしいスタッフと共に今稽古場でつくっています。24人の出演者全員それぞれの魅力が煌めいてひかり輝くミュージカル「ピーターパン」、劇場でお会いできることを、そして一緒に作品をつくり体験できることを楽しみにしています。
藤田俊太郎(ふじた・しゅんたろう)
演出家。1980年生まれ、秋田県出身。2005年、東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業。在学中の2004年、ニナガワ・スタジオに入る。2005年以降2016年まで蜷川幸雄作品に演出助手として関わる。2011年「喜劇一幕・虹 艶聖夜」(新宿ゴールデン街劇場)で作・演出を手掛ける。2012年さいたまネクスト・シアター「ザ・ファクトリー2 話してくれ、雨のように……」(彩の国さいたま芸術劇場)演出。2014年「The Beautiful Game」(新国立劇場小劇場)演出にて第22回読売演劇大賞 杉村春子賞 優秀演出家賞受賞。2015年「美女音楽劇 人魚姫」2016年「ミュージカル手紙」「JERSEY BOYS」演出。
「ミュージカル手紙2017」演出。絵本ロックバンド「虹艶(にじいろ)Bunny」としてライヴ活動展開中。