「俺、タックルやりてー!」と叫ぶ祇園健次、ラグビーに関しては全くの素人だが、やる気満々。そんな祇園健次に主将の赤山濯也は「カメ」という稽古を課する。膝をつけないで、四つん這いになって歩く、さらにその背中にラグビーボールをのせる。この下りは原作にもあり、地味で過酷なトレーニングだが、後になって重要性を増す。これは体幹を鍛えるラグビーの基礎トレーニングで、重しをのせることもある。こういった描写はコミックにリアリティが増す。これを舞台でやると、もう“リアル”だ。「なんちゃって」な動きではないところにクリエイターのこだわりを感じる。
ラグビーの試合シーン、スローモーションとクイックな動きとのコンビネーションが的確、またスクラム、タックル等の動作も舞台ならではのフォーメーションで魅せる。舞台前方の階段、これはスライド(上手下手に俳優がいて動かす)させるのだが、これが動きをよりムーヴメントに、こういった方法は舞台らしい工夫だ。ラグビーの基本動作をそのまま舞台上で披露するのではなく、マイム的な動き、照明、音、セット、あらゆる手法を駆使する、基本は俳優の身体ひとつでも、様々な表現方法を重ねていくことによって厚みを持たせる。ここがクリエイティブなポイント、しっかり観ておきたいところだ。