セットもいたってシンプル。映像は一切使わずにアンサンブルのパフォーマンス、布等の小道具を時々使用し、様々な状況を見せる。例えば事故のシーンはこのアンサンブル陣が二人の身体をリフトするが、あたかも“これは運命なのだ”というニュアンスも感じられる。そしてテーブルの“足”になったりと、もう大忙しであるが、このアンサンブル陣、原作の遣い魔であろうか、その動きは蜘蛛や蟻の如くであるが、薔薇の棘のような空気感も感じる。薔薇は美しいが、必ず棘がある。深紅の薔薇の花びらはさしずめ“血”、そのはらはらと舞う様は、吸血樹(ヴァンパイア)の哀しみも感じさせる。愛と死、運命、そこに“永遠”が縦糸のように関わり合い、一枚の布の如くに織りなす。時間も場所も飛び越えて、想いが生きる。人の想いはもしかしたら永遠に続くのかもしれない。1幕もので2時間10分程。さほど長さを感じさせない愛の物語であった。