【レポート】舞台「男水!」

 さて舞台上での“水泳”だが、ひとつの表現にこだわらずに様々な【形態】を試みる。映像を使用したり、あるいはダンス×泳ぎの型、だったり、シフォンの白い布の旗をはためかせたり、紗幕を用いて、そこに光と音の効果合わせたりと縦横無尽だ。また、合間に回想シーンをはさんだりしてキャラクターの心情をクローズアップして見せたりもする。飛び込み台のイメージの台が動く、ちょっと八百屋になっている正方形の台の上で【泳ぐ】、床には競泳用プールのあの“線”が描かれていたり。さしずめ、舞台はプール&プールサイドなのである。アンサンブルの活躍、【水】になったり、【波】になったりetc.と大忙し。
 そこそこ楽しく泳いでいれば、ほんのちょっと努力していいタイムが出ればそれでいい、ありがちな発想だ。しかし、それでは得られないものが必ずある。TV版でも描かれていたが秀平は、平から「なぜ俺に負けたのに喜んでいたのか」と問われ、答えに窮するシーンがある。いいタイムは出せたが試合には負けた。負けは負けなのだという現実。その言葉にハッとする秀平、そんなことを秀平に言い放った平、ここに真実がある。「いいタイムでよかったね」等の言葉は何の意味もないのだ、ということを。「勝つも負けるも自分次第。水の外には仲間がいる」、そう、戦いは全て“ガチ”であり、孤独なものであり……全てに通じる言葉だ。
 TVドラマは30分×8話、舞台は2時間10分程度、舞台転換も競泳の如くにスピーディー。多くの部活ものの作品があるが、水泳という舞台にはおよそ不向きと思われていた題材であったが、いや、舞台での表現がもしかしたら水泳が一番合っているのかもしれない。

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2.5news(編集部)

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