そして29日の2回目の公演の後、NTTから技術面に関してのレクチャーがあった。
まず、今回初お目見えの「超変身歌舞伎」、直に顔に化粧しなくても歌舞伎役者気分になれるインタラクティブ体験展示、実は昨年5月のラスベガス歌舞伎で初お披露目し、どこでも移動可能なコンテナーにパッケージングして国内でも展示を始め、現在ではのべ10000人以上が体験しており、この「超歌舞伎」では、さらにバージョンアップして「超変身歌舞伎」として登場。設置されたカメラで顔を自動認識、そこに選んだ隈取りが「AR(拡張現実)」重畳された表情が超歌舞伎上に設置された高さ10mの「デカオー丸」にプロジェクション・マッピングで投影され、大迫力で表情の変化が楽しめる、というアトラクション。しかも顔にちゃんとフィットしているので、“顔と隈取りと合わない”ということはない。簡単でお手軽に歌舞伎“メイク”出来ちゃうというすぐれものだ。
そして今回の超歌舞伎の見せ場である八重垣紋三vs蔭山新右衛門の“分身”同士の対決シーン、イマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!」を活用している。映像中の特定被写体を分離する「被写体抽出技術」、この1年でめざましく技術が進み、アルゴリズムの高度化によってさらに精緻を増した。例えていうなら、紙を何かの形に切り抜くとしよう。たいがいの人はまず、大雑把に切り抜いてから細かいところをきれいに切って形を整えるだろう。これと似た“作業”をしており、被写体をどのくらいの精緻で正確に切り取るか、つまり“抽出”をするのである。技術が進んでいるので、より綺麗に抽出することが可能になった、という訳である、しかもグリーンバックを使用せずに、である。実際には複数箇所に置かれたカメラで捉えた歌舞伎俳優をリアルタイムに抽出し、さらに複数の抽出システムを同時に運用することにより八重垣紋三vs蔭山新右衛門の分身同士がバーチャルでの迫力の立回りが実現したのである。もちろん、もっと技術が発達すれば、その精緻やスピードも当然早くなる。かつてはタイムラグが大きかったが、現在ではかなり小さくなっており、技術の進歩で限りなく“同時”が実現可能になる、ということだ。そして可能性としては、野外での演劇やライブでの使用等を考えているそうである。そしてさらには現地(劇場・ライブハウス)に行かないと観れなかったものが観れるようになるかもしれない、ということ。いずれにしてもかつてSFで語られたような技術が少しずつ現実味を帯びてくることになりそうだ。
2025年2月をもって、建て替…