さて、今回のミュージカル『薄桜鬼』はタイトル通り、原田左之助にフォーカスしたストーリー。冒頭から原田左之助登場、新政府軍と戦い、傷つく原田、そこで思い出すのは千鶴のことだ。
熱血漢らしく、楽曲もラテン調での幕開き、音楽がほぼノンストップで、あの歌に繋がっていく。歌い踊る新選組、アンサンブルもポップなダンスを披露するが、とにかく、この曲がかかるとミュージカル『薄桜鬼』が始まる！といった感じになって客席もテンションが上がる。新政府vs幕府、風間千景、天霧九寿、不知火匡ら、鬼たちとの戦い、若変水（おちみず）をめぐる思惑、これらが幾重にも重なって“ドラマ”を魅せる。各キャラクターに見せ場があり、飽きさせない。雪村千鶴役の礒部花凜はかなり小柄で長身の原田左之助役の東啓介との“胸キュン”シーンが可愛らしく、微笑ましい。楽曲も新旧あり、ここは聴きどころ。
新選組の末路自体は大河ドラマや小説等ですっかりおなじみで、隊士たちがどうなるのかは先刻承知。そこに『薄桜鬼』ならではのエピソードがさしずめ縦糸のように織りなしていく。今回の“主演”である原田左之助演じる東啓介、長身から繰り出される槍のアクションは豪快でここは見どころ。また原田左之助と鬼である不知火匡、どこか共鳴しあっている様子、千鶴が父である雪村綱道の企みを知った時の驚愕と落胆、感情として共感出来るところだ。そしてミュージカル『薄桜鬼』ならではの隊士たちを中心とした群像劇としても見応え、あり。ゲームを知らなくても幕末に生きた男たちの熱い物語は心に響くはずだ。
ダンス、殺陣、アクションも回を追うごとに進化しており、難易度もかなり高く、スピーディー、かつダイナミックなフォーメーション。ここはミュージカル『薄桜鬼』の真骨頂。安定したシリーズ物、継続していくのは並大抵ではないが、ここはスタッフの底力、続けられるだけ、続けて欲しい。
