この劇中劇が、それこそ予測不能なトラブル続きで、座れば椅子は崩壊、飾ってあった絵は落ちる、ドアに頭をぶつけてぶっ倒れる、セットから身体が抜けない、それでも“SHOW MUST GO ON!”で劇中劇は強引に進行される。舞台裏では取っ組み合い、出演者が文字通り、身体を張ってのドタバタを“これでもか”と繰り出す。それに“思い違い”や“勘違い”、“誤解”、“聞き間違い”が幾重にも重なって笑いの津波が客席に押し寄せる。可笑しいことがあるといちいち笑い転げる者、役者でないのに何故か演じたがりで“やる気スイッチON”で暴走する者等、妙にマイペースな者、いわゆる“ドタバタ喜劇”の王道、俳優陣が出たり入ったりすることによって起こるすれ違いが、さらなる笑いを増強する。駄洒落も可笑しく(悪魔→あくま→あ、クマ)、劇中劇のセリフ回しも妙に大げさ、また突然踊りだす等、これが全体のエッセンスとなって更なる笑いを誘う。これはいわゆるスラップスティック・コメディと呼ばれるジャンルで、観客を笑わせること、観客の笑いを引き出すことを主眼にしたもので、倒れる、ぶつかる、走る等身体を張ったギャグが多いのが特長だ。往年の映画ではチャップリンのコメディ映画が挙げられる。これはアドリブよりも綿密な計算に基づいた動きが中心で、今回の『リメンバーミー』もまた、細かく動きを計算し、稽古に稽古を重ねた結果の賜物だ。誰かが出る、誰かが引っ込む、別の人間が登場する、舞台が回る、この役者の出入りと役者個々のコメディセンスが要になってくるが、全員が個性的で、もう髪を振り乱し、汗もかいて大熱演!最後の結末は観ていれば、なんとなくわかるかもしれないが、それでも大笑いしてしまう。さて、この〝荻窪遊々演劇社〟こんな調子で大丈夫なのか?と思うかもしれないが、こんな調子だからこそ面白い!である。