第1セット、試合が始まるが、過去の出来事、エピソードを交えながら物語は進行する。「自己中の王様」と言われていた影山飛雄、バレーボールのセンスは抜群だ。烏野高校を寄せ付けない青葉城西、「叩くなら折れるまで」と言い切る及川 徹の意志の強さを遊馬晃祐が台詞に込める。ライバルとなる影山飛雄、その悩める姿を木村達成が芝居と表情で構築する。セッターは他のメンバーの個性を引き出し、チームを強くする、それを体現する及川 徹は優れた選手だ。その実力を知っているからこそ戦いがいがあるというもの。“挑戦者”烏野高校は挑み続ける。影山飛雄の才能と比べると凡庸な菅原孝支、自分の実力はよく知っているが「俺もいっぱいいっぱい試合に出たい!」と、その切なさを猪野広樹が全身で叫ぶ。
単純に試合を見せるのではなく、人間関係や本当の想いを合間に挿入し、よりキャラクターに共感を感じるようにしている構成は心憎い。また、時折後方に映し出されるLIVE映像、演劇は虚構であるはずなのに、その瞬間、“ドキュメンタリー”となって観客に迫る。及川 徹と影山飛雄、実は及川は影山の才能に気づいており、それが及川を精進させる。また及川 徹と岩泉 一の関係もまた熱いものがある。小学校からバレーボールをやっていた仲で2人の間には「阿吽の呼吸」がある。
また主人公以外のキャラクターの見せ場が多く、菅原孝支が試合に出る場面は彼の洞察力と人柄をよく表現しており、また、及川 徹とやり取りする岩泉 一の言葉には無二の友人に対する優しさと厳しさが垣間見える。山口 忠の場面ではひたむきな性格がよく伝わり、物語にいっそうの興味を引くような場面となっていた。
スピードとダイナミックさと、立体感と、そしてアナログ表現と、これが渾然一体化し、試合を描写する。たたみかけるような試合運びで拮抗した白熱した試合を大いなる熱量で見せる。俳優陣の頑張りと八百屋になった舞台、その中央で盆が回り、2人の人間が持つネットもまるでもう1人のキャストのように大活躍する。そして3幕は第3セット、怒濤のような舞台転換と俳優陣のフォーメーションで迫力、そして過去シリーズにはなかった表現も加わり、試合を見せる。楽曲もここは大きく盛り上がる。たたみかけるようなパーカッションが鳴り響いたかと思うとストリングスの激しくも繊細な音色もあり、楽曲だけ切り離して聴いても聞き応えがありそうな曲ばかり。コミックを読んでいれば試合の結果は周知の通り。ところどころにお笑いも挟み込み(孤爪研磨役の永田崇人と黒尾鉄朗役の近藤頌利の縦横無尽な活躍に注目)、長丁場な公演時間を感じさせない。次回公演も楽しみなシリーズだ。