『アルカナ・ファミリア』シリーズはPSP向けの“乙女ゲーム”として発売された恋愛アドベンチャーゲーム。
4タイトルがシリーズとして発売されると同時に、ドラマCD、書籍、アニメと幅広くメディアミックス展開をしており、人気も高い。
場所設定は地中海に浮かぶとある小さな島、レガーロ島、温暖な気候で肥沃な大地、交易で栄えている町である。この島を災厄から守るために立ち上がったのが”アルカナ・ファミリア”という不思議な力を持った組織である。組織の構成員は”タロッコ”と契約を結び、”アルカナ”という特殊能力を持っておいる。この組織のトップはモンドという男で、その1人娘・フェリチータは美しく、しかも武芸に秀でている。アニメでは、モンドは突然引退を発表し、後継者選び”アルカナ・デュエロ”を行うと宣言し、勝者はフェリチータと結婚出来る、というストーリーであった。舞台版はオリジナルストーリー、ある日、バーチェによって集められたメンバーは”アルカナベリッシモinバレンチーノ”の開催を告げられる。アルカナ・ファミリー選抜メンバーとワイルドカード枠1名を加えた7名でレガーロ島NO.1のベリッシモ(イケメン)の座を競うコンテスト。優勝者には、なんとフェリチータからのKISSが!そんな訳でやたら張り切るメンバー達、そんな彼らに事件が起こる、というのが大筋だ。
ミュージカル仕立てではないが、歌って踊る場面も用意されている。注目のアクションシーン、フェリチータのキックやリベルタ、ノヴァの刀さばき、デビドの拳銃(しかも難易度の高いアクションも)、バリバリとところ狭しと見せてくれる。バーチェの食事シーンはなんと”ガチ”で囲みでは”床にところどころ白いものが”と暴露される程(いちいちしっかり食べている)。リベルタとノヴァの言い争いは”お約束”、ルカのエプロンシーンはかなりのお笑いシーンに。ファンには嬉しい”客いじり”、質問されるのだが、それが舞台で反映させるかも?、ここはアドリブなのか脚本通りなのかは”不明”なところは仕掛けとして面白い。また能力発動シーン、原作やアニメではフェリチータは基本的に唱えないが、舞台では初めて唱えるという。ここは舞台ならではの相違点である。
マンガ・アニメ・ゲーム原作の舞台に出演歴の多い大島峻は安定したキャラクター作り。ノヴァ役の大海将一郎はこれが初舞台だそうだが、芝居に殺陣に健闘。デビド役の校條拳太朗は派手なアクションで印象づける。バーチェ役の小林涼はコミカルな役作り、ルカ役の北村健人はおっとり、ジョーリイの塩口量平はちょっとクール、とそれぞれのキャラクターがはっきりしていて観やすい。姿は見えないが声だけの出演、モンド役の升毅は圧倒的な存在感で、ヒロインの中田美優はアクションに健闘。
基本的にコメディではあるが、ちょっとうるっとくるシーンも用意。サスペンス的な要素を織り込み、笑いとドキドキとハートフルな要素を上手く混ぜてスピーディーに見せる。演出は『マルモのおきて』で知られる八十島 美也子 。上演時間は約2時間であるが、だいたい1時間40分ぐらいで”決着”がつく。残りの時間は、というと、ここは実は”告白”シーン。各キャラクターがそれぞれじっくりと”告白”するので、ここは見せ場、そしてフェリチータが……であるが、ここはお楽しみ。やり取りも楽しく(しかもいくつかパターンがある様子)、ファミリーなので大団円的な締めくくりとなっている。
原作もそうだが、地中海のおおらかな、太陽の日差しが降り注ぐイメージ、からっとした物語、気楽に観劇出来る娯楽作品に仕上がっていた。
舞台『アルカナ・ファミリア Valentino』
2016年1月20日~1月27日 あうるすぽっと
http://arcanafamiglia.otomelive.com
取材・文/高 浩美