真実だけを見据えるテオドルス、全てをありのままに見て絵画にするフィンセント、真逆に見えるが、実は根底では同じかもしれない。フィクションであるが、ベースになっているのは史実、虚と実と、愛と憎しみと、再演だからこその深みと俳優自身の解釈、ピアノのシンプルな音楽が、心情や状況を奏でる。プロジェクション・マッピング、絵筆こそ見えないが、観客のイマジネーションをかきたてる。
テオドルスは才能を「GIFT」、神から与えられたものだと、そしてそれは“さだめ”なのだと言い、「俺はあんたが憎い」とフィンセントに言う下りは、テオドルスの真実だ。しかし、彼の死後、ポケットの手紙を読んで号泣する彼もまた真実の姿である。
原作の力もあるが、コミックから飛び出し、ミュージカル仕立てにして音楽と歌とでつなぎ、テーマや登場人物を際立たせる舞台化で成功、文芸ものとしても見応えのある作品だ。