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『神様はじめましたThe Musical♪2016』

 2015年上演の『神様はじめました The Musical』の再演。
基本的に初演と演出のベースは物語は変わらないが、物語の軸が初演は奈々生の”アドベンチャー要素”が全面に出ていたが、今回は巴衛と奈々生の想いがだんだん恋愛感情へと発展していく様を強調した演出になっている。
 出だしは初演と同じく真っ白な衣装を着たアンサンブルが登場し、アカペラで合唱する。アンサンブルたちのコーラスが響き、それから物語が始まるが、ヨノモリ社の神使の瑞希が狂言回し的な役割をするところは初演を踏襲。客席に鞍馬が降りてきて客いじり。アニメでミカゲ役を演じていた石田彰、声だけの出演も変わらない。
 アクションシーンやギャグシーンが”パワーアップ”、エンターテイメント性を追求、また初演では出てこなかったキャラクターも登場する。また巴衛の”過去”が前回よりきっちりと描かれており、何故、巴衛は奈々生に惹かれてしまうのか、ファンなら先刻承知ではあるが、ちょっと泣けてくる下りでもある。奈々生は真っすぐな性格、無鉄砲で後先考えない前向きな行動力を初演から演じている寺島が元気に好演。巴衛役の八神蓮と鞍馬役の南圭介、こなれた感じで、2人の小競り合いや掛け合いも楽しく、今回初役の瑞希演じる樋口は、コミカルに、ちょっと謎めいた感じ。ツクネ役のSKEの大場美奈(ゲネプロ)、一部台詞がアドリブとなっており、八神との即興のやり取りは必見。ゲネでは握手ネタを披露していた。
 原作は『花とゆめ』(白泉社)にて2008年6月号から連載、単行本は現在23巻まで刊行(2015年12月現在)。テレビアニメ第1期は2012年10月〜12月、第2期は2015年1月〜3月まで放送された。物語の舞台となっている川越等はファンのいわゆる”聖地巡礼”として人気を博している。舞台版は単行本の2巻までで、巴衛が奈々生の神使になるまでを描いている。日本では”八百万神”といい森羅万象に神の発現を認める古代日本の神概念がある。この物語の根底にあるのは、そういった日本特有の思想に基づいたもので、”日本らしいコンテンツ”といえよう。
 また、狐と人間の付き合いは古く、また特別な霊力を持つ動物とされている。日本のみならず、世界各国の民話や伝説み登場する。特に日本では稲荷神社の使者として信仰されているので、親しみやすさがある。日本では狐と人間の関係については古くは『日本書記』にあるそうである。天狗に関しても諸説あるようで元々は中国では凶事を知らせる流星を意味するものだったよう。この天狗観は日本では根付かず、密教や山岳信仰の影響などで、平安時代には天狗は妖怪と化し、語られるようになったそうである。そういった観点から観ると設定等、全くの荒唐無稽ではない。さらにこの作品は”ラブコメ”の要素を加味したので舞台化されるにあたって”ミュージカル(ミュージカルコメディ)”という手法がふさわしかったと言える。物語はまだまだ続いているので、続編も楽しみである。

©鈴木ジュリエッタ/白泉社・神様はじめました THE MUSICAL♪2016製作委員会

舞台『神様はじめましたTHE MUSICAL♪2016』
2016年1月15日~1月21日 AiiA 2.5 Theater Tokyo
http://kamisama-butai.com

取材・文/高 浩美

2.5news(編集部)

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