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【レポート】井上芳雄、奈緒、上白石萌歌、山西惇、益岡徹 登壇『大地の子』製作発表の様子をお届け!

2026年2月26日(木)明治座にて上演される、『大地の子』。

原作は1987年から「月刊文藝春秋」にて連載され、「白い巨塔」や「沈まぬ太陽」など数々の大作を世に出してきた山崎豊子による同名小説。
戦争孤児となった少年が、死線をさまよう苦難を経て、中国人教師に拾われ、中国人「陸一心」(ルー・イーシン)として育てられる。しかし、成人した一心を襲ったのは文化大革命に伴う大きな時代のうねりであった…。戦争孤児となった陸一心の波乱万丈の半生を描いた物語。山崎豊子が現代に問う-魂の感動巨編が舞台化。

脚本は小劇場から大劇場まで幅広く担うマキノノゾミ、演出は数多の作品を世に産み出しきた、日本を代表する演出家・栗山民也が務める。

主人公となる陸一心(ルー・イーシン)役を井上芳雄、主人公の妹であるあつ子役を奈緒、主人公の妻となる江月梅(チャン・ユエメイ)役を上白石萌歌、路頭に迷う主人公を引き取る中国人教師・陸徳志(ルー・トウチ)役を山西惇、中国に残した家族に自責の念を抱え続ける松本耕次役を益岡徹が務め、11月27日(木)に都内にて実施された本作の製作発表に登壇し、本作への意気込みを語った。

井上芳雄「これまでも製作発表はやらせていただいていますが、この作品は今までにない緊張感があります。大事なものをしっかりお伝えしなければと、見えない重責のようなものを感じています。ドラマの上川隆也さんが演じる陸一心を夢中になって観ていて、原作も何度も読み返し、僕自身にとっても大切な作品だったので、こうしてその役を演じさせていただけるという、本当に奇跡のような巡り合わせだと感じています。とにかく、自分が出来ることを皆さんと一緒に精一杯やるのみだと思います。難しい時代になってきていて、過去のことを知ることは未来を知ることだと思いますので、それを演劇を通してお伝えしたいです」

奈緒「この大きな物語に参加できることを、私自身すごく幸せに感じています。舞台でこうした製作発表をやるのも初めてで、集まった方々を見ていると、この作品の注目度や皆さんが期待して待ってくださっているんだなと、いまこの瞬間、とても実感しております。皆さんと精一杯稽古をして、自分や物語としっかり向き合い、日々を重ねていきたいです。今日はそんなスタートの日だと思っています」

上白石萌歌「私もこのような製作発表の場を設けていただくのが初めてで、この場に立たせていただいて、『大地の子』という物語がいよいよ始まるんだなと、大きな緊張と高揚感に包まれているところです。戦後80年を迎えた今、この作品が上演されること、そして私自身がこの作品に参加させていただけることに大きな意味を感じています。ここに並んで立っている皆様、そして演出の栗山民也さんの言葉を信じて、最後まで役として与えられたものをしっかり噛み締めながら生き抜きたいです」

山西惇「大作の大役にご指名いただけたということで、震えております。大変な時代になってきているので、こうした物語が来年きっちり上演できたら素晴らしいなと思っています。栗山さんの言葉を信じてみんなで作り上げていきたいです」

益岡徹「原作の小説も読んでいて、ドラマも毎回感動しながら観ていた記憶があります。そんな作品を今回舞台として皆さんにお見せすることができる。稽古も始まりますが、初日までいろいろな時間が過ごせると思っています」

続いて、演出を手がける栗山民也からのメッセージを、キャストを代表して井上が代読。

【演出:栗山民也 コメント】
戦争によってかけがえのない命を奪われた人々に、もう一度言葉を送り、全身を与える。これが演劇の一つの仕事だと、ある劇作家の強靭な姿勢から教えられたことがある。生者と死者は、いつも重なり合う。そのことが私の中に「記憶」という大切な言葉となって強くへばり付き、稽古場でのあらゆる事象と出会うたびに、それが今を映し出す「記憶の再生装置」なのだと考えるようになった。
この山崎豊子さんの「大地の子」を随分と前に読んだとき、広く限りなく拡がる黄色の大地の上を、幾万人もの人たちが並んで歩む姿が、生まれては消える影のような運命の残像に見えた。その歴史をどこまでも深掘りした文章の奥には、その時代の陰惨ないくつもの光景が刻まれている。満蒙開拓団のリアルな歴史が、一人の青年を通して明らかにされていくのだが、お国のためという大義のもと、それは国を上げて推し進められた開拓という占領政策であった。そして、棄てられていった。
写真と文章で綴る江成常夫さんの「シャオハイの満州」という、旧満州の姿を写し出した記録の本が、わたしの机の上にある。この物語を考える中で、何度もページを開き、そこに写された残留孤児たちの顔を見つめる。今、何を語り掛けようとしているのか。そのぼんやりとどこか漂うような目の奥から、こちらに向かって厳しく無数の感情で問いかけてくる。
―誰も置き去りにしてはいけない。誰もが世界から必要とされているのだから―
そんな死者たちの無数の声が聞こえてくる。
この「シャオハイ」という言葉は、中国語で子供のことである。
稽古に入る時、いつもこんなことから始める。物語に描かれた時代を見つめるため、その時代のその場所の真ん中に自分を立たせてみる。そこで見えてくるもの、聞こえてくるもの、肌で感じるものすべてを、全身で受け止める。時の記憶、場所の記憶を自ら体験してみることから始める。
素敵な俳優たちが、揃った。みんなで、この物語をしっかりと丁寧に力を込めて、嘘のない舞台にしたいと思う。

代読し終えた井上は「『大地の子』に対する僕たちの想いが全て詰まっていると感じました。栗山さんがいつもおっしゃっている演劇に対する想いや、演劇ができる役割というものも、この文章の中にも書かれていて。この場に居ないのに、格好良くてずるいなって思いました(笑)」と、感想を述べた。

今回の製作発表では、本作のプロモーションビデオがお披露目された。
キャスト陣も初めて完成したものを観たとのことで、井上は「あれ、中国に行ってたっけ?と思うくらい壮大なスケールで撮っていただきました。実際は南房総で、半日くらいかけて撮りました(笑)」と明かし、奈緒は「南房総とは思えない映像で(笑)今日初めて観れたので良かったですし、皆さんとこうしてお会いできて、一緒にここでお話できることがとても心強く感じています」と、上白石は「本編で流してもいいと思うくらい本当に壮大な映像でした。私も観ていて身が引き締まるような、鼓舞されるような気持ちになりました」とコメント。

本作への出演が決まった時の感想を質問されると、井上は「初めての舞台化で自分がそこに参加できると知った時は本当に信じられない気持ちでいました。ドラマを家族でリアルタイムで観ていたので、まず両親に出演のことを知らせました」と両親も喜んでいたことを話し、奈緒は「実感が湧かないくらい、自分の中ですごく大きな出来事でした。その後、栗山さんとお会いした際に『奈緒、一緒にできるの?できないの?』と聞かれ、その時に本当にこの舞台に立てるんだなと、実感が湧いてきて少しだけ震えたのを覚えています。物語はいろんな届け方があり、自由に受け取っていただくことがいいものも沢山ありますが、『大地の子』は一種の正しさというものを、私たちが強く持って届けなければならない作品だと心から思っていますので、稽古場でみんなで探していきたいです」と意気込んだ。上白石は「山崎豊子さんの壮大な世界に飛び込ませていただくということで、私に務まるだろうかという気持ちがあったのですが、何より栗山さんとまたご一緒できることが本当に楽しみで。演劇の神様のように崇めている存在なので、また栗山さんの言葉をいただきながら稽古ができることを嬉しく思います」と期待を述べ、続けて井上について「姉(上白石萌音)と何度も共演していたり、10代の頃に1度ご一緒させていただいたこともあって、勝手に親戚のように思っています(笑)」と、心強い兄のような存在だと明かした。
山西は「栗山さんとは10年以上一緒にやらせてただいていて、栗山さんがやるんだったら絶対大丈夫だろうという気持ちと、原作を読んで、できるのか?と。役柄が中国の方ですが、中国語は喋らなくていいとのことで、安心しました(笑)。栗山さんのマジックですごい作品になる予感しかないので、早く稽古が始まってほしいです」と、益岡は「原作やドラマの膨大な内容を2~3時間にぎゅっと凝縮してまとめている、すばらしい台本だと思いました。それを今の時代にお見せできるのは何重にも意味があると考えています。戦争が終わった後、満洲の開拓団にいた人々が取り残され、悲しい最期を迎えたというイメージがありましたが、辛い思いをした子だけではなく、温かい親と出会った子供たちがいることを知った時、胸を打たれたのを覚えています。それを稽古で真実として積み重ねていきたいと思っています」と語った。

公演概要

『大地の子』

原作 山崎豊子『大地の子』(文春文庫)
脚本 マキノノゾミ
演出 栗山民也

出演
井上芳雄 奈緒 上白石萌歌 山西惇 益岡徹
飯田洋輔 浅野雅博
増子倭文江 天野はな 山下裕子 みやなおこ 石田圭祐 櫻井章喜 木津誠之 武岡淳一 ほか

公演日程 2026年2月26日(木)~3月17日(火)
会場 明治座

主催・製作 明治座 東宝

お問合せ 東宝テレザーブ 0570‐00‐7777(ナビダイヤル/11:00~17:00)

【チケット情報】
東宝ナビザーブ https://stage.toho-navi.com/
【先行先着販売】
11月30日(日)11:00~
【一般前売】
12月6日(土)11:00~
※先行抽選販売は、東宝ナビザーブにご登録(無料)いただきましたお客様がご利用いただけます。

明治座オンラインチケット https://ticket.meijiza.co.jp/
【先着先行】
▶ゴールド会員(有料) 11月30日(日)11:00~
▶一般会員(無料) 11月30日(日)15:00~
【一般販売】
12月6日(土)11:00~
※ご予約には、「明治座 FAN 倶楽部」ゴールド会員(有料)または一般会員(無料)へのご登録が必要となります。

プレイガイド
12月6日(土)より一般前売開始
●チケットぴあ https://w.pia.jp/t/sote/
●e+(イープラス) https://eplus.jp/daichinoko/
●ローソンチケット https://l-tike.com/daichi2025/

電話予約
12月7日(日)より
東宝テレザーブ 0570-00-7777(ナビダイヤル)(11:00~17:00)
明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00~17:00)
※お電話予約は、一般前売開始日の翌日より残席がある場合にお取扱いいたします。

明治座切符売場
12月10日(水)10:00~
※窓口販売用のお取り置き席はございません。

公式サイト https://daichinoko-stage.jp/

Rie Koike