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【レポート】ミュージカル『ISSA in Paris』制作発表会見の様子をお届け

2026年1月に東京・日生劇場、2月に大阪・梅田芸術劇場メインホール、愛知・御園座にて上演される、ミュージカル『ISSAinParis』。
世界中で「HAIKU」として知られている日本の文学の文化の一つ、「俳句」。本作は現代と過去を交錯させながら、小林一茶の知られざる10年を大胆に描くオリジナルミュージカル。

本作の原案・作詞・作曲を担当するミュージカル界の巨匠モーリー・イェストンは小林一茶の愛しいわが子を失った一切の深い悲しみ、諦めきれぬ思いを、最小限の言葉で最も深く表現している「露の世は露の世ながらさりながら」という俳句に感銘を受け『ISSAinParis』創作をはじめました。

脚本・訳詞には、ディズニー映画「アナと雪の女王」「塔の上のラプンツェル」の訳詞をした高橋知伽江。
演出には同じモーリー・イェストンの作品でもあるミュージカル『ナイン』にて第28回読売演劇大賞最優秀演出家賞と第42回松尾芸能賞優秀賞演劇部門を受賞し、モーリーからの信頼も厚い藤田俊太郎。
主人公のシンガーソングライター・ISSAこと海人を海宝直人、若き日の小林一茶を岡宮来夢が務め、ルイーズ役で潤花、テレーズ役で豊原江理佳が出演。

11月20日(木)に、都内にて制作発表記者会見が実施され、出演の海宝直人、岡宮来夢、潤花、豊原江理佳、演出の藤田俊太郎が登壇。
制作発表では歌唱パフォーマンスも行われ「露の世は」(岡宮)、「俳句」(全員)、「一つの言葉」(海宝)の3曲が披露され、さらに、小林一茶の生まれ故郷である長野県・信濃町からそれぞれのPRキャラクターである“アルクマ”と“一茶さん”が特別ゲストとして登場しました。

公演への意気込み

藤田俊太郎:この作品の礎を作っているモーリー・イェストンさん、高橋知伽江さん、ジュリア・チェンさん、素晴らしいカンパニースタッフ、そして33名のキャストと共に、精一杯作っているところです。このカンパニーに出会えたことを本当に心から幸せに思いながら、日々稽古を重ねていこうとしています。この作品は、一つの言葉から音楽の喜び、音楽が誕生する喜びを描いてます。観客の皆様には、劇場でその祝祭の瞬間に立ち会っていただいて、音楽の尊さを感じていただけたら幸いです。

海宝直人:先ほど披露させていただいた楽曲のほかにも、本当に素晴らしい楽曲がたくさんある作品になっています。クリエイターの皆様も原作のないオリジナル新作として作っていて、すごく大変でもあり、とても挑戦しがいのある企画だと感じながら、どんどん稽古に入っているので、皆様に楽しんでいただける作品になるよう努めてまいります。

岡宮来夢:このタイミングで、信濃町が町制施行70周年、そして小林一茶も200回忌、長野県も150周年を迎えます。長野県出身の僕が、信州人の小林一茶を演じられることの喜びを噛み締めながら、稽古を頑張って大千秋楽までみんなで駆け抜けていきたいです。

潤花:日々新たなものが生まれながらお稽古が進んでいると感じています。今日ここで楽曲を披露させていただいて、また新たなものが生まれるのではと、新たな気持ちで迎えさせていただきました。素敵な皆様と、お客様の前で披露する日まで、しっかりと丁寧にお稽古をしていきたいと思います。

豊原江理佳:このような素晴らしいクリエイティブチームの皆さんと、キャストの皆さんのチームの一員として、このオリジナルミュージカルを作れることにとてもワクワクしております。私自身、俳句の世界に初めて飛び込むので、分からないこともたくさんありますが、稽古でモーリー・イェストンさんの美しい音楽と、小林一茶の俳句の世界が美しく融合しているのを感じています。これから皆さんとたくさん話し合いながら、素敵な作品を作っていきたいです。

演じる役柄について・共感するところ

海宝直人:演じる海人は、なかなかヒット曲が出せずに悩んでいて、その根底には家族との葛藤や、誰もが直面するような様々な苦しい思いというものがあって。自分と向き合うことができない中、母を通して一茶という存在に出会い、少しずつ成長していく。誰もが共感できるような、人間らしいキャラクターです。僕もそうですが、皆さんもそれぞれの人生を重ねて共感しながら見ていただけると思います。

岡宮来夢:たくさんの方が小林一茶を演じてこられましたが、この作品では“一茶がかつてパリに渡っていたらどうなっていただろう”という、ちょっとファンタジー的なものになっています。そうした所から一茶の構築をするのが、自分自身としてはすごく楽しみです。現時点では、弱いもの、貧しいもの、儚いものだったり、そうしたものに視点を当てながら、海や山など大きなものにもフォーカスを当てながら、それをたった17文字で表現する。1個1個心を動かしていく、優しくも情熱的な、僕だけの一茶にしたいと考えながら稽古を頑張っていきたいです。

潤花:演じるルイーズは、フランス人の父と日本人の母をもつ、本業はダンサー・振付家、副業で現地ガイドをしている女性です。藤田さんが“海人に新しい世界を見せる人”とおっしゃっていて。パリで日系人として暮らしている彼女が、いろんな痛みや辛さを経験しているからこそ、声を上げられない人に対しての愛情の注ぎ方が人よりも長けていると感じています。とても人間らしく、自分の弱さも認めている、強くて魅力的な女性です。

豊原江理佳:テレーズは、表では舞台女優として活動していますが、密かに革命運動にも身を投じている女性です。最初に藤田さんと役についてお話をした時「今までたくさんフランス革命についての作品が上演されてきたけど、そことは全く新しい女性のリーダー像をこの作品の中で作りたい」という提案をいただきました。フランス革命前のパリでの運動と、現代のデモが対照的に描かれており、そうした中でテレーズのキャラクター像や、今までにない女性のリーダーの姿というものを、自分の中にある正義感や感じ方と照らし合わせながら、今から見つけていきたいです。

作品のどんな部分に共振するか

藤田俊太郎:一番は、小林一茶の俳句です。いろんな俳句がありますが、非常に繊細で大胆だと感じていて。小さき者への眼差しと、未来人ではないかと思うくらい大胆に世界を捉える眼差しにに強く共振しています。その大胆さを作品の中で出すのは、自分がどう演出するかにかかってくる。作品そのものがファンタジーで、人間の力とユーモアに溢れるという世界観を作りたいと考えていますので、あらゆるスタッフワークを駆使して、時空を超える瞬間を大胆に表現します。

楽曲の魅力・歌唱パフォーマンスを終えての感想

豊原江理佳:ミュージカル『タイタニック』で初めて触れてからモーリー・イェストンさんの音楽が本当に大好きで。俳句と音楽が綺麗に融合していて、どちらも美しさが倍増していると感じています。

潤花:譜面を頂いた時から、どれも本当に素晴らしい楽曲だなと感じました。まだ稽古が本格的に進んでいない段階で、今日皆さんの前で初めて「俳句」を歌わせていただきましたが、テレーズ(豊原)と目を合わせた時に、生きている時代は違うけど同じ時代に生きていたら、同じ気持ちで一緒に戦っていたと思うくらい共鳴して、素敵な瞬間を感じました。

岡宮来夢:今日初めて皆様の前で歌わさせていただきました。ピアノ、フルート、チェロの伴奏を僕らも初めて聴いて、見えなかった景色が見えてきて、心地よく歌うことができました。「露の世は」という曲を初めて聴いた時、みずみずしい緑の雰囲気を感じて、浸るように聴いていました。どの楽曲も、奥行きのある豊かなものばかりなので、また新たに楽器が加わった時にどうなるのか、僕もワクワクしていますし、皆様にもワクワクしながらお待ちいただけたらと思います。

海宝直人:制作発表で歌うのは緊張しました。披露させていただいた曲もそうですが、時代も場所も変わるので楽曲の幅が広い印象があります。今までのモーリー・イェストンさんの作品では聴いたことのないような新しいサウンドや、これぞモーリー・イェストンさんの楽曲だというものもあるので、楽しいなと思いながら僕自身も聴いていました。

公演概要

ミュージカル『ISSA in Paris』

■出演
海人(ISSA): 海宝直人
小林一茶: 岡宮来夢
ルイーズ: 潤 花
テレーズ: 豊原江理佳

中河内雅貴・染谷洸太[Wキャスト]
彩吹真央・藤咲みどり[Wキャスト]
内田未来
阿部 裕

森山大輔、塚本 直

井上真由子、岡田治己、尾関晃輔、加藤翔多郎、黒川賢也、木暮真一郎、斎藤准一郎、渋谷茉樹、島田隆誠、根岸みゆ、般若愛実、引間文香、深瀬友梨、古川隼大、武者真由、森 加織、大村真佑*、森田有希*(五十音順)*オンステージスウィング

中井理人・星 駿成・見﨑歩誠[トリプルキャスト]

■スタッフ
原案・作詞・作曲:モーリー・イェストン
脚本・訳詞:高橋知伽江
演出:藤田俊太郎
振付:ジュリア・チェン
音楽監督・編曲・キーボードコンダクター:森亮平
美術:松井るみ
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一
映像:O-beron inc.
衣裳:前田文子
ヘアメイク:宮内宏明
歌唱指導:YUKA 田中俊太郎
オーケストラコーディネート:新音楽協会
稽古ピアノ:中野裕子 田端俊介
通訳:伊藤美代子
振付助手:チヒロ・カワサキ
演出助手:守屋由貴 大舘実佐子
制作:藤田早苗
制作助手:山内未央
舞台監督:倉科史典

■公演日程
2026年1月10日(土)~30日(金) 東京・日生劇場
チケット料金
【平日】S席15,000円 A席10,000円(全席指定・税込)
【土日祝千穐楽】S席16,000円 A席11,000円(全席指定・税込)
問合せ:梅田芸術劇場 0570-077-039 (10:00~13:00、14:00~18:00)
主催:梅田芸術劇場 後援:長野県・信濃町

2026年2月7日(土)~15日(日) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
チケット料金
【平日】S席15,000円 A席10,000円 B席5,500円(全席指定・税込)
【土日祝千穐楽】S席16,000円 A席11,000円 B席6,000円(全席指定・税込)
問合せ:梅田芸術劇場 0570-077-039 (10:00~13:00、14:00~18:00)
主催:梅田芸術劇場 後援:長野県・信濃町

2026年2月21日(土)~25日(水) 愛知・御園座
チケット料金:S席15,500円 A席10,000円 (全席指定・税込)
問合せ:(株)御園座 営業部 052-222-8222(平日10:00~18:00)
主催:御園座

■企画・制作:梅田芸術劇場

■公演HP:https://www.umegei.com/issa2026/

ストーリー

現代の東京に住む、シンガーソングライターISSAこと海人。海人は突然の母親の死から立ち直れず、呆然自失になっていた。そんな中、命の儚さをうたった小林一茶の「露の世は露の世ながらさりながら」の句が脳裏に浮かぶ。
また、海人の母は、一茶には消息不明とされる「空白の10年」があり、その期間、鎖国の日本をひそかに抜け出してパリへ行っていたという仮説をたてていた。海人は天才俳人が日本で小林一茶と名乗るまでの「空白の10年」に一体何があったのかを突き止めるため、そして自分自身が前に進むためにパリへ旅立つことを決める。海人はパリに行き、何を得るのか。そして、小林一茶の10年には何があったのか。2人の青年が時空を超え、パリで出会う、ファンタジー・ミュージカル。

キャラクター紹介

■海人/ISSA:海宝直人
正体を隠し、「ISSA」としてYouTubeで活動しているシンガーソングライター。
デビュー曲がバズり一世を風靡するも、スランプに陥り、曲が書けなくなって10年。
誰にも会わず、部屋に閉じこもる日々を送っていた。
そんな彼のもとに届いた母の訃報。そして思い出す、母が好きだった一つの俳句。
「露の世は露の世ながらさりながら」それは、止まっていた海人の時間を再び動かすきっかけとなった。
母が生前追い続けていたのは、俳人・小林一茶がかつてパリに渡っていたという仮説である。
その夢のような物語を信じ、海人は引きこもり生活から一歩踏み出し遠く離れたパリに向かう。
大切な人を失った悲しみ、自分を見失ったままの孤独、そして止まったままの音楽。
その答えは、時空を超えた旅の先に──。

■小林一茶/弥太郎:岡宮来夢
江戸後期の俳人、小林一茶。本名弥太郎。
名句を残す彼にも、歴史が語らない「空白の10年間」がある。この期間、実は鎖国ニッポンを飛び出し、ヨーロッパに渡っていたという、海人の母が追い続けた仮説が実際にあったかもしれない。
異国への憧れを抱いた弥太郎は、出島からオランダ船に乗り、波乱の時代の真っただ中、パリにたどり着く。
そこで運命の女性テレーズと出会う。しかし時はフランス革命の足音が近づく1788年。
民衆は、世の無常を嘆き、自由と平等を求め、身分制度の打破を目指し、戦いの準備を進めていた。
その中にテレーズもいた。
一茶には帰国の日が近づいていたが、一緒に革命に参加しテレーズと運命を共にする決意を固める。
その時、時空を超えた奇跡が起きる。

■ルイーズ:潤花
海人がパリで出会う、フランス人の父と日本人の母をもつ現地ガイドの女性。
彼女の本業は振付家で、日本の俳句や民謡をラップと融合させ、独自のスタイルで踊る革新的なパフォーマンスを展開している。母の遺した研究を手がかりに小林一茶の謎を追う海人に関心を抱き、彼の探究に協力する。

■テレーズ:豊原江理佳
弥太郎がパリで出会う女性。
表の顔は舞台女優だが、その裏では、密かに革命運動にも身を投じている。
ある日、占い師に告げられた不思議な予言から、弥太郎との出会いに強い運命を感じる。
動乱と変革が訪れるフランス革命の時代、異国の地で戸惑う弥太郎を支え、心の拠り所となっていく。

Rie Koike