今年2025年に本格推理小説や怪奇・幻想小説の祖として後世に名を残した作家・江戸川乱歩が7月28日で没後60年を迎えました。
江戸川乱歩没後60周年記念作品『RAMPO WORLD』と題して乱歩の作品を原案に設定を現代に変え、オリジナル解釈を加えた「3つのグノシエンヌ」、「蟲」、「白昼夢」が10月3日(金)より2週間ずつ連続でシネマート新宿、池袋シネマ・ロサほか順次公開。
本日9月4日(木)、シネマート新宿にて完成披露舞台挨拶付き先行上映会が開催され、オフィシャルレポートが到着しました。
映画上映前、3 作品の監督、キャスト陣が「RAMPO WORLD」とプリントされたおそろいのTシャツを着用してステージに登壇すると会場からは大きな拍手が。実はこれはファッションデザイナーとしても活躍する、『3つのグノシエンヌ』キャストの岩男海史がデザインしたもので、デザインのポイントについて「(T シャツの)後ろに3作品の劇中写真を使わせていただいていますが、その中で僕がポイントだと思うところだけ色を残して、他のところをセピアにしました!」と説明する。
続いて『蟲』主演の平埜は「どん詰まりの映画監督の青年が、友人の紹介で、ある女性に出会い、その女性との出会いをきっかけに愛に向き合い、“うわあ!”と、“うわあ!”となっていくような、そんな愛の詰まった映画。ある種、究極のラブストーリーだと思っているので、それぞれが抱えてるラブストーリーに注目していただけたら嬉しいです」。
さらに『白昼夢』主演の見津は「主人公の青年が、自分の住むマンションの下に住んでいる夫婦の生活をのぞいているというのが大まかな話となります。映画って、観客が映画に出ている人たちの物語をのぞいている、という感覚だと思うんですけど、今回は“のぞいている人をのぞく”という、また一枚フィルターが挟まったような、面白いフェーズの見方ができる作品だと思うので。そこを楽しんでいただけたら」と見どころを語った。
また撮影中のエピソードについて質問された『3つのグノシエンヌ』チームの安野は「劇中には松田さんと岩男さんの熱いシーンがあるんですよ。そこのシーンについては(ネタバレになるので)今はまだ言えないですが、そのシーンの翌日に岩男さんとの撮影があった時に、岩男さんが『松田凌がすごいんだよ』って話をずっとされていて、本当に松田さんのことが大好きなんです。もう“分かった”というくらいずっとされていたんですが、そこに愛を感じて。なんか素敵だなって思いました」と語ると、岩男も「強烈な俳優と出会ったなと思ったんですよ。しかも同じ 1991 年生まれで同い年。めちゃくちゃ楽しかったです」。
一方の松田も「それは逆に僕も思いました。本当に強烈な……というか“鮮烈な出会い”でした。彼のお芝居で、監督が『面白いね』というリアクションをしていたりして、(相手の芝居を)引き出してくれるというか。本人の魅力が爆発した瞬間に……俳優を嫉妬させる俳優だなと思うような感じがありました」とベタ褒め。そんな松田の言葉に「うれしいですね」とかみ締めていた様子の岩男だった。
その言葉を聞いていた見津が「それと僕も本当に宮田さんを愛しているので」とたたみかけて会場を笑わせると、「宮田さんとは現場に入る前に、本読みとかリハをさせてもらったんですけど、そこが初めてましてなのに、もう作品をどうしようかと、そのことばっかり話していました」と宮田の魅力について力説してみせた。
さらに寒い時期に撮影が行われたという本作について見津が「この作品は(乱歩の)『湖畔亭事件』を原案としているので湖が出てくるんですけど、11 月くらいだったので、本当に寒くて。唇の色がなくなるぐらい寒かった。でも本当にそこのシーンは一番、画面がきれいなんで。そこを楽しみにしていただけたら」と語った。
本シリーズは江戸川乱歩の原作をもとに、オリジナル解釈が加えられて現代に蘇った作品となるが、そんな作品の台本を読んだ感想について質問された岩男は「台本を読んで本当にやりたいと。俳優冥利(みょうり)に尽きるなと思いました」と述懐。「人生で 1 回は江戸川乱歩の作品がよぎるというか。『やってみたらどうなんだろう』と思いながらも、『いやいやそんなそんな』と理性で消し飛ばすようなところもあって。そこを探求していくみたいなところがある。あとはエロスですね。それは決して性的な意味だけじゃなくて、『やってはいけない』というのが分かってるからこそ、逆に引かれてしまうというか。それは江戸川乱歩作品全般にあるのかなと思っていました」とコメント。
続いて木口も「実は僕もこのお話をいただく前に、原作をすごく読みあさっていて。こんなタイミングで本当にできるのか、と思ったんです。もちろん原作と映画の脚本は違うんですけど、原作を読んでるときはめちゃくちゃ柾木に感情移入してしまって。『こういう役をやりたい!』と思っていたんですけど、映画では『柾木役じゃないのか……』と思ってしまったんですが」と笑いつつも、自身が演じた池内という役についてはなかなか理解ができなかったという。「でも、だからこそチャレンジングだったなと思っていて。そういう意味でもやれてよかったし、こうやって江戸川乱歩さんの作品に関われて。僕はすごく光栄だなと思っていました」。
さらに宮田も「やはり読んだ時は、癖が強いんで。本当に変態だな、と思ったのが正直な印象でした。それはどの台本もそうだと思うんですが、キャラクターを理解するということがかなり困難であるなと思っていて。それはなかなか難しかったですね」と振り返った。
そんな舞台あいさつも時間切れ。最後のあいさつを求められた『3つのグノシエンヌ』のウエダ監督は「この後、『3つのグノシエンヌ』を皆さんにはじめて観ていただくことになります。この企画は、3 つの作品で『RAMPO WORLD』ですので、この『3つのグノシエンヌ』を気に入っていただいた方も、そうじゃない方もぜひ。続いて公開される『蟲』も『白昼夢』もめちゃくちゃ面白い映画なので。コンプリートしていただけたらなと。公開はまだ 1 カ月先なので、これから SNS なんかで、今日の感想なんかも含めて、一緒に盛り上げていっていただければ」とコメント。
松田も「『3つのグノシエンヌ』には、江戸川乱歩の『一人二役』という原案がありまして。そこに監督の思いをこめて、『3つのグノシエンヌ』というタイトルがつけられました。皆さんにこれからご覧いただいて、どういったものを感じていただけるのか、僕らもすごく楽しみにしています。ここから江戸川乱歩とか、エリック・サティとか、実話などをひもとき、その世界に踏み込んでいくと、この映画の中からさらなる面白みがありますし、映画を観て、答え合わせができるようなこともちりばめられています。そういったことも含めて、この江戸川乱歩没後 60 周年企画というものが今の世の中に必要だと思いましたし、この企画は今生まれるべき時なんじゃないかと思いました」と語ると、「先ほど監督もおっしゃっていましたが、自分たちのこの作品を、『3 つのグノシエンヌ』、そして『蟲』、『白昼夢』と、熱を落とさずに見続けていただいて。SNS などでより盛り上げていただけたらなと思います」とメッセージ。
さらに『蟲』の平波監督は「江戸川乱歩の原作といえば、パブリックイメージとして猟奇的だったり、アブノーマルな部分がフューチャーされていますし、そういう印象を持たれがちだと思うんです。そして僕もそういう世界観は好きで、今回監督させていただくにあたって、そういった物語を再構築していったんですが、そういう中で、先ほど申し上げたようなイメージだけでなく、その中でどう人間を見つめてるのか。そういう部分をひもとく作業になりました。そしてそこに演者という身体性が加わると、僕は本当にこの子たちがかわいくてしょうがなくなった、というか。人間って本当に愚かだけど、本当にかわいくて愛おしいんだな、と。そういう思いを最終的にこの作品に込めたつもりです。この『3 つのグノシエンヌ』も『白昼夢』も『蟲』も、これは乱歩の本当に一端かもしれないですけど、江戸川乱歩先生の偉大な軌跡に触れていただけたら、我々もしあわせです」。
そして平埜も「この『蟲』という作品は本当に愛の詰まった作品だと思っていて。江戸川乱歩の愛はもちろんですが、それにも増して平波監督の映画に対する愛が本当に詰まっています。今日この舞台上にいる役者、監督だけでなく、本当に多くの共演者、スタッフの皆さまのエネルギー、情熱が詰まった作品に仕上がったと思っております。大きな愛というのはなかなか厄介なもので、その裏側にはある種の変態性みたいなものもあります。そしてそれは皆さんもお心当たりがあると思うんですが、ある種の変態性があるなと思っておりまして。そんな愛と変態というエンターテインメントを楽しんでいただけたら」。
さらに『白昼夢』の山城監督が「この 3 作品そうだと思うんですが、事実は小説より奇なり、という言葉もあるように、うそのような、奇妙な出来事は世の中で実際に起こっていて。そうしたことが(現実でも)ギリギリ起こるんじゃないかと。そうした感触みたいなものが、この 3 作品にはあると思っています。現実の方が恐ろしいことが起きていますし、それを映画にするととても奇妙で。本当に起こるのだろうかと思うんですが、そのギリギリの何かを『白昼夢』に乗せられたらと思いましたし、それを捉えたいなと思い、制作しました。どうか 3 作品の宣伝をよろしくお願いします」。
さらに見津も「今回の『RAMPO WORLD』という企画においては、おそらく僕が小さい頃に感じていた乱歩へのイメージが。それは先ほど皆さんがおっしゃっていた通り、猟奇的な部分だったり、アブノーマルさみたいなところが、どうしても前に出てくると思うんですけど、それがこうしてインターネットが普及してきた時代において、わりとそれに近しいことが現実でも起きてきてしまっているというか、起こりうるなと思っていて。今だからこそ、乱歩作品って皆さんにとって親和性があるんじゃないか。それが今回の『RAMPO WORLD』としての企画でもありますし、そんな中でも『白昼夢』はのぞく、ということがテーマになっているんですけど、そこで一番描きたい物というのはきっと3 作品一緒で。それは人間らしさ、人の本質というところだと思うので、そういうところに注目して見ていただけたらうれしいです」と会場に呼びかけ舞台挨拶は幕を下ろした。
公式X:@RAMPOWORLD https://x.com/RAMPOWORLD
公式Instagram:@rampoworld https://www.instagram.com/rampoworld/
<STORY>
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HP:gnossiennes-movie.com
©2025「3つのグノシエンヌ」パートナーズ
<STORY>
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HP:mushi-movie.com
©2025「蟲」パートナーズ
<STORY>
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HP:hakuchumu-movie.com
©2025「白昼夢」パートナーズ
【配給】アルバトロス・フィルム