ともすると障がい者に対して「大変だから施設で安全に過ごした方がいい」と考えがちで一見、それがいいように感じるが実は、当事者にとってそれが本当の幸せなのだろうか?とこの作品は問いかける。普通に働いて、普通に過ごすことの大切さ、そして誰かの役に立つことの喜びを知ってこそが本当の幸せなのではないか、と。
劇中で「人の幸せは1つは愛されること、2つ目はほめられること、3つ目は人の役に立つこと、4つ目は人に必要とされること」と言う、働けば、この4つを得られる。障がいを持つ少女は仕事を任された時、仕事をやり遂げた時、「出来たね」「ありがとう」と言われた時、満面の笑みで大きな声で返事をする。そんな笑みは周囲の人々の心を変える力がある。淡々と進んでいく物語、どこにでもありそうなありふれた景色、どこかにありそうな小さな工場、そして仕事。仕事とはなんだろうか、を問いかける。幸せになれない仕事、人が仕事に合わせて時間に追われているのはどこにでもある光景だ。しかし、このありふれた工場ではありふれてないことを実行する。それは人に仕事を合わせること。少女に合わせて様々な工夫をし、それが上手くいったときの喜びはなにものにも代え難い喜びだ。
時折流れるピアノの旋律も心地よく、ラストシーンも温かく、観劇した後は幸せな気分に浸れる作品だ。